日本は既に人口減少局面にある。2015年には28.4万人が減少し、高齢化も進行している。労働人口は6000万人割れ目前である。このような条件の中で一定の豊かさを維持するため、ITによる生産性の向上は急務である。

 人口減少は必ずしも経済の縮小を意味しない。日本経済の未来には、多くのチャンスがあることも確かだ。2015年のインバウンド消費は約3兆円に達する。今後はTPP(環太平洋経済連携協定)による好影響が期待され、その経済効果は年間13兆円との試算もある。2020年の東京オリンピック・パラリンピックの経済効果は30兆円と見込まれている。

 こうした機会にうまく対応することで、企業は力強く成長できるはずだ。しかし、そこにはハードルもある。課題の1つは、長年使い続けたシステムだ。日本企業のビジネスを支える基幹システムのうち、21年以上前に構築したものが20%超。10~20年の間に構築されたシステムは40%弱である。目の前には大きなチャンスが広がっているのに、古いITが阻害するようなことがあってはならない。数十年来のシステムが今も残る大きな理由は、全面刷新に多額の投資が必要なことだ。

オラクルが提供するクラウドの力
ビジネスを強化する「Digital AID」

 この課題を乗り越える手段の1つが、急速な進化を遂げたクラウドである。クラウドにより、低コストかつスピーディーにIT環境を構築できる。しかもエンタープライズレベルの信頼性や可用性も担保できる。今やクラウドはビジネスの強化、イノベーションを支える基盤となった。

 クラウド導入の目的は企業によって異なるだろう。例えば、SNSを活用して、顧客とのエンゲージメントを強化したい。あるいは、業務プロセスをグローバルで標準化し、国境を越えた人材再配置をスムーズにしたい、等々。出発点は「自分たちは何をしたいか」であり、「そのためにITをどう使うか」という順序で考える必要がある。

 そんな企業をサポートするため、オラクルはクラウドサービスを強化してきた。日本オラクルでは「POCO(The Power Of Cloud by Oracle)」という親しみやすい名称で、積極的な事業展開を行っている。POCOにより、お客様のデジタルビジネスをサポートする。それがオラクルの「Digital AID(デジタルエイド)」である。

ビジネスの中核を担うOracle ERP Cloud
ビジネスの中核を担うOracle ERP Cloud

コストやスピードの観点で強み
クラウドは地域間格差是正にも有効

 オラクルのクラウドには3つのレイヤーがある。SaaS、PaaS、IaaSである。これらのすべてをカバーするクラウドベンダーは少ない。

 例えば、「おこわ」の専門店を展開する米八グループ。100店舗以上を展開する同社にとっての課題は、ビジネスの見える化だった。各店の売り上げを集計するのに時間がかかり、迅速な現状把握ができていなかったのである。そこで、米八グループはOracle ERP Cloudを導入。売り上げデータのリアルタイムでの把握に加えて、原価や在庫などのデータを組み合わせた多様な分析ができるようになった。

 かつては、同様の仕組みを構築するには大きな投資と1年以上の導入期間を要した。クラウドの進化により、今では格段に安く数カ月の期間でシステム構築が可能になったのである。

 また、スーパーマーケットやディスカウントストアなどを運営するOlympicグループは、クラウドを用いて経営管理の基盤を構築した。従来は表計算ソフトを使って各店の予算管理や管理会計を行っていたが、多大な手間がかかっていたという。こうした業務をオラクルのクラウドに移行することで、工数とコストを大幅に削減した。

 クラウドの利便性は、ネットワークさえつながれば、本社と同じように出先からも自由にシステムを活用できることにある。その恩恵は地方企業にとっても同じようなことがいえる。クラウドは地域間のデジタル格差解消にも有効だ。

 今年7月、オラクルは富士通との戦略的提携を一層強化し、クラウドビジネスの加速に向けた一手を発表した。富士通のデータセンター内にオラクルのクラウドを設置し、高品質なサービスを提供するという内容だ。これまで以上に、日本企業にとって使いやすいクラウドサービスになるだろう。

 クラウドの選定に際しては、目的を明確にするとともに、そのシステムの将来性について十分に検討しておく必要がある。拡張性やパフォーマンス、信頼性などの様々な観点で、オラクルのクラウドは大きな優位性を持つ。クラウドの力を通じて、日本企業の競争力向上に貢献したいと願っている。