東京電力パワーグリッド(東電PG)のサービスエリア内で、送配電ネットワークを管理する「託送業務システム」。電気料金の請求に必要なデータを最大時に3万件通知できないトラブルを発生させた。システムの不具合改修は2016年内を予定しており、トラブル収束までは4月にスタートした電力小売りの全面自由化から8カ月かかる見通しだ。

 そもそも東京電力グループの託送業務システム開発には、当初から不安視する声があった。2年あまりという開発期間の短さもさることながら、電力小売り全面自由化という新しい制度であること、2016年4月に東京電力ホールディングスが旧東京電力から東電PGなどの三つの事業会社に分社化することなど、東京電力グル-プにとって未知数の要素が重なったためだ。

「提供できないリスクを内包している」

 2015年7月に開かれた、電力システム改革小委員会のワーキンググループに提出した資料「託送業務システムの開発状況について」をみると、東電の「不安」が見て取れる(図1)。同資料には、「難易度の高いシステム開発」「要件定義の決定に先立って仮決めで開発を進めてきた」「現時点においては工程がひっ迫している」といった文言が並ぶ。

図1●東京電力が2015年7月に提出した資料。「難易度の高いシステム開発」「工程がひっ迫」などの文言が並ぶ
図1●東京電力が2015年7月に提出した資料。「難易度の高いシステム開発」「工程がひっ迫」などの文言が並ぶ
(出典:東京電力2015年7月28日提出資料より抜粋)
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 東電が開発ベンダーとして三菱電機を選定したのは、2013年10月。2016年4月の小売り自由化まで、開発期間は実質2年あまりしかなかった。東電は2014年12月に、仮決めの機能要件を含めて「基本的なシステム設計」を終えたとしている。

 「工程がひっ迫している」との記述でも分かるように、東電にとって余裕のあるスケジュールではなかったようだ。一方で「2015年7月末時点では工程は予定通り進捗」したとの文言も見られる。つまり、開発工程に大きな遅れは無かったといえる。