本格的なデジタルの時代に突入し、ITを活用した新しいサービスや企業が次々と生まれている。代表的プレイヤーはアップルやグーグル、ウーバーなどのIT企業で、既存の産業に対して新しいビジネスモデルを持ち込み、破壊的インパクトを与えるため、デジタルディスラプター(デジタルによる破壊者)とも呼ばれる。

 デジタル化の影響は既に日本企業にも及んでおり、“王国”とまで言われた家電産業は壊滅状態に陥った。最強の自動車産業もIT企業の挑戦を受け、将来にわたり磐石とは言えなくなりつつある。既存の大企業といえども、自らのビジネスをデジタル化し変革していかない限り、その未来は暗い。デジタル化に対応できない日本企業の問題点を解説する。

 デジタル技術の進歩により、企業における事業戦略の選択肢は格段に増えた。一方、デジタル化のタイミングと対応方法を読み違えると、大きな代償を払うことになる。

 デジタル技術を活用した新しい製品やサービスは、常にその可能性を検討しておかなければならない。新サービスの展開については、既存事業から、いつ、どのように移行していくのかを決めることが難しい。既存の事業領域で高い市場シェアを持ち、成功してきた企業ほど今の事業のディスラプション(破壊)を躊躇する。結果として、新しいことへの着手が遅れる。

 対応が遅れると、好調だった既存事業が外部のディスラプター(破壊者)によって大打撃を受ける。これは日本の製造業、特にハイテクメーカーが経験してきたことだ。これまでの強みに磨きをかける方に注力し、新しい技術への対応を遅らせてしまう。いわば「イノベーションのジレンマ」状態だと言える。

 デジタル化とは無縁だった業界でも、ディスラプターの登場で一気に打撃を受けるケースもある。米国のIT企業である、アマゾン・ドット・コム、ウーバー・テクノロジーズ、エアビーアンドビーがそうしたディスラプターの代表格だ。

 こうした企業が登場した当初は、規制や商慣習が存在しているので、デジタル化による新事業の発展余地はそれほど大きくないだろうと考えられていた。ところが、その成長は大方の予想をはるかに超えた。ディスラプターたちは、既存の企業が保有していた設備や車などの資産を保有せずに事業を推進している。使っている技術も、実は難しいものではない。

 共通するのは、既存の産業の隙間を突いた新しいビジネスモデルのアイデアだ。それに加えて驚嘆に値するのは、事業推進のスピードである。もともと米国で事業を開始したものだが、商習慣が異なる他国に対しても一気呵成に攻め込み、既存業界に大きな衝撃を与えているのだ。