「この世で生きている限り、必ず最後は“決済”という行為が必要だ。残念なことにね。その意味で人間の生活、活動の全てが銀行業務につながっているんだ」――。アジアの中でも、先進的な取り組みで知られるシンガポールの大手銀行であるDBS銀行のオリビエ・クリスパン氏は、このように語る。

 クリスパン氏の言うとおり、金融サービスを抜きに日常生活を送るのは難しい。現金で買い物をするなら、まずはATM(現金自動預け払い機)で銀行口座からお金を引き出さなければならないし、マイホームを購入したいなら、銀行窓口でローンの相談に乗ってもらうのが常道だろう。

 しかし消費者が求めているのは、その時々に必要な金融サービスであり、必ずしも銀行ではない。FinTechの潮流が勢いを増すなか、これは金融サービスに挑戦するスタートアップ企業はもちろん、銀行関係者にとっても共通認識になりつつある。

 こうした共通認識が醸成されるうえで、決定的な役割を果たしているのがスマートフォンだ。銀行窓口やPCに最適化されたインターネットバンキングによって今まで提供されてきた各種金融サービスは、消費者一人ひとりが持ち歩くスマホの中で、いかにサクっと便利に使えるかが問われるようになった。少々乱暴に言えば、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)やゲームアプリなどと並んで、スマホ内での居場所を争わなくてはいけなくなったわけだ。

 重厚な金庫を併設した営業店やスタッフ、大規模なコールセンターの重要性が相対的に低くなる中、FinTechスタートアップは、スマホ内の熾烈な競争をうまく勝ち抜こうとしている。

写真●パネリストとして登壇する、お金のデザイン取締役COO 北澤直氏(左)、ネストエッグ代表取締役 田村栄仁氏(中)、マネーツリー 代表取締役CEO ポール・チャップマン氏(右)
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写真●パネリストとして登壇する、お金のデザイン取締役COO 北澤直氏(左)、ネストエッグ代表取締役 田村栄仁氏(中)、マネーツリー 代表取締役CEO ポール・チャップマン氏(右)

 ITpro EXPO 2016では、パネル討論「体感できるFinTech革命~貯蓄から運用、資産管理まで、FinTechで変わる「あなたのお金」~」を開催する。投資運用アプリ「THEO」を手掛けるお金のデザインで取締役COO(最高執行責任者)を務める北澤直氏、自動貯金サービス「finbee」の正式サービスを2016年12月に控えたネストエッグ代表取締役の田村栄仁氏、PFM(個人資産管理)アプリ「Moneytree」のマネーツリーで代表取締役CEO(最高経営責任者)を務めるポール・チャップマン氏の3人をパネリストに迎え、FinTech時代の消費者とお金の付き合い方について議論する。

 詳しくはこちらから。ITpro EXPO 2016は、2016年10月19日から10月21日まで、東京ビッグサイトにて開催される。記事で紹介した講演は10月20日(木)16:10~17:00、展示会場内のアリーナで行われる。