2000年代後半にプライベートクラウドを導入した企業が、「次の一手」としてパブリッククラウドへの移行を検討し始めた――。2016年、クラウドコンピューティングは節目を迎えていることが、20社以上のクラウドコンピューティングにかかわるITベンダー、そしてクラウドを既に導入しているユーザー企業への取材から分かった。

 既にクラウドを数年間使いこなしたユーザー企業や、ITベンダーはクラウド導入について様々な知見を蓄積している。その一例が「プライベートクラウドの限界」だ。

 プライベートクラウドにはいくつかの形態があるものの、サーバーなどのリソースを特定できる形で、運用・保守付きでコンピューティングパワーを提供する形式のサービスを指す。多くの企業でリソースを共有するパブリッククラウドと異なり、セキュリティや、可用性の面で安心できるとのことから日本企業には人気のサービスだ(図1)。

図1●日本企業のクラウド採用率。グレーのグラフが2012年、青いグラフが2016年。 出典:ガートナー(2016年2月)
図1●日本企業のクラウド採用率。グレーのグラフが2012年、青いグラフが2016年。 出典:ガートナー(2016年2月)

 ところが今、プライベートクラウドを利用している企業は、パブリッククラウドへの移行の検討を始めつつある。その理由は大きく二つある。一つはスケーラビリティだ。クラウドといえども、プライベートクラウドの場合は、契約したデータセンター内に限ってしかスケールしないという問題がある。

 日本のITベンダーが提供するプライベートクラウドを利用しているユーザー企業の1社は、「国内で大きなデータセンターがあったとしても、スケーラビリティは海外のパブリッククラウドには勝てない。将来的に必要なリソースやパフォーマンスのインフラを確保できるか不安がある」と打ち明ける。

 もう一つの問題は、プライベートクラウドには新技術の採用がなかったり、遅かったりすることだ。今、パブリッククラウドは単なるインフラのサービス化だけではなく、AI(人工知能)関連機能やビッグデータ処理といったミドルウエアのサービス化を急速に進めている。ユーザー企業は、アカウントさえ作成すればすぐにでもAI関連機能を利用したり、ビッグデータ処理の基盤を構築したりできるようになってきた。

 一方プライベートクラウドは、サーバーやストレージのサービス化にフォーカスしていることが一般的だ。AIやビッグデータ処理といった新技術を組み込んだサービスは、まったく別のモノになっている。

 こうした状況を踏まえ、今後のクラウドの導入は、どのように変化していくのか。フルクラウド化を実践した企業はどのような点に悩み、どのように解決していったのか。ITproEXPO 2016の「クラウド2周目で分かった!成否の分かれ目」では、日経SYSTEMS10月号「クラウドの新常識25」の取材の中で分かった、クラウド導入の成否の決め手を解説する。

  ITpro EXPO 2016では、2016年10月19日から10月21日まで、東京ビッグサイトにて開催される。記事で紹介した講演は10月19日(水)13:00~13:30、展示会場内のメインシアターで行われる。

 2016年はパブリッククラウドの代名詞であるAmazon Web Services(AWS)が登場してから10年目に当たる。AWSを中心に今後、企業システムにおいてクラウドの導入がどのように変化していくのか。来場事前登録をしていただき、是非、お立ち寄りいただきたい。