次世代スーパーコンピュータ、いわゆるポスト「京」の開発が最大2年遅延することが明らかになった。文部科学省のHPCI(High Performance Computing Infrastracture)計画推進委員会が8月10日に開いた会合で遅延を決定したためだ。

 近年、半導体の微細化に伴う加工技術開発の困難さと製造コスト上昇の両面から「ムーアの法則(18カ月ごとにチップ性能2倍)」に沿った進歩が鈍化し、世界的に半導体開発で遅延が生じている。このため、文科省は有識者を交えたHPCI計画推進委員会に対して、ポスト「京」のメモリーやプロセッサに用いる半導体技術の再検証を求めていた。

 その結果、半導体に(基本設計時点より)新たな技術を採用することとし、それに伴い「試作・詳細設計フェーズ」を当初の2017年度終了から12~24カ月延長することになった()。採用する新技術についての説明はなく、開発・製造を請け負う富士通も明かさないが、微細加工技術に関する部分と推測される。

図●「Flagship 2020」(ポスト「京」)の開発スケジュール
図●「Flagship 2020」(ポスト「京」)の開発スケジュール
出所:文部科学省
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 2020年に理化学研究所で本稼働する予定だったところから「Flagship 2020」と呼称されるポスト「京」は、最悪2022年となるため名称が妙な具合になってきた。HPCI計画推進委員会によれば、Flagship 2020の開発目標や予算(コスト)に変更はないという。

 この遅延に関して、Flagship 2020の関係者は、「最先端テクノロジーの使用可能性を追求するのは当然のことだ」としながら、HPCI計画推進委が打ち出した最大2年の遅延は「非常にコンサバティブなものなので、実質1年以内に短縮しギリギリの2020年度末までの完成にこぎ着けるだろう」と、楽観している。

 こうしたスケジュールは、半導体製造ハブのTSMC(台湾セミコンダクター・マニファクチャリング)に負う部分が大きいとみられる。