米オラクルの事業再編に伴う苦しみが、どうやら峠を越えたようである。売り上げの「カニバル」(共食い)が避けられず、「先行き不透明である」と疑問符を投げかけられてきたオラクルのクラウドビジネスだったが、直近1年間の急速な移行の結果、間もなく利益を上げられる見通しを投資家たちがほぼ確信したと見られるからだ。

 オラクルの年初からの株価は米上場企業平均のほぼ2倍の12%も上昇。同社表記による2017年度(2016年6月〜2017年5月)決算発表後、過去最高値の50ドル超えを実現し、今でも49ドル台を維持している。

 さらに、オラクルのサフラ・キャッツ共同CEO(最高経営責任者)は、同社の象徴的な転換点として、6月開始の新会計年度のクラウド売り上げがソフトライセンス売り上げを上回る見通しだと発言し、クラウド事業の不確実性を拭い去った。

 パブリッククラウドへの参入は、既存のソフトウエア事業やハードウエア事業、およびサービス事業に大きな影響を与える。そこで、米HPE(ヒューレット・パッカード・エンタープライズ)や米デルテクノロジー、米シスコシステムズのIT大手3社は、自前のパブリッククラウドサービスから撤退したうえに、ソフト&サービス事業も売却・再編し、クラウドサービス事業者や企業顧客向けにハードウエア中心のシステムインフラを提供するビジネスに徹するという経営判断を下した。

ハードとクラウドの両方を手掛けるのは3社のみ

 そのため、サーバー事業やストレージ事業を抱えながらパブリッククラウド事業も手掛けるIT大手は、ワールドワイドで米IBM、オラクル、富士通の3社となった。そして3社の業績は、IBMが21四半期も前年同期比で減収が続いている。同様に売り上げの7割を占めるテクノロジーサービス(テクソル)が7四半期連続減収に見舞われている富士通も、あと3四半期以上減収が続くと予想されている。

 もっとも富士通に関しては、サーバー事業やストレージ事業に対するクラウド比率が図1に見る通り7.7%と低く、テクソル連続減収の理由がクラウドによるカニバル現象とは言い難い。欧州中心の海外戦略上の経営問題が直接の原因だろう。

図1●クラウドとハードの売り上げ比率
図1●クラウドとハードの売り上げ比率
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 仮に富士通がパブリッククラウドサービスから撤退せずに、今後本格的に取り組む覚悟があるとしたら、数年先からクラウド移行に伴うカニバルの洗礼を受け始めるものと見られる。富士通は、クラウドではオラクルやIBMから2〜3周回遅れという位置に付けている。

 一方、図1の3社中、最もクラウド化率の高いオラクルはクラウドの影響は免れなかったものの、傷手は比較的軽微で推移した。同社の総売上高は2015年5月期に前年同期比5.4%のマイナス成長に陥り、そこから5四半期連続減収が続いた。しかし、2016年8月期から増収に転じ、その後の3四半期も増収が続く。直近の2017年5月期(オラクル表記で2017年度第4四半期)は2.8%増と、マイナス成長に陥る前の水準に戻している。