前回の記事で、終焉に向かいつつある米インテルの64ビットプロセッサItaniumのことを書いた。そうしたら、驚いたことに「類は友を呼ぶ」ではないが、Itaniumと同じように消えゆく運命となりそうな国産64ビットRISCプロセッサと、それを搭載する世界最速の大型UNIXサーバーが4月4日に富士通から発表された。SPARC64 XIIプロセッサとSPARC M12サーバーである。

 これら新製品の発表から読み取れるのは、国産コンピュータの中で最後まで生き残ってきた「富士通製SPARC64サーバー」が、2年後のミッドライフキッカー、いわゆる20%前後の強化版を最後に幕引きになる可能性が高まったということである。

 同社はSPARC64 XII(SPARC M12)以降のロードマップをホームページで公開した。それを見ると、2年後の2019年にSPARC M12の機能強化版、いわゆるミッドライフキッカーを出すことが読み取れる。しかし、その先については何も触れられていない。その点ではItaniumのロードマップと同じである。

 米IBMのPOWERも含めて一般的にRISCプロセッサでは、新設計プロセッサが市場投入された2年後にミッドライフキッカーが登場し、1つのプロセッサ世代で4年間持たせる。その意味では2019年に登場する予定のM12機能強化版(以下、M12+)をM12の後継機、例えばM14サーバーと言うのは難しい。

 日本IBM出身の元サーバー技術者は、「このロードマップは紛れもなくSPARC M12のミッドライフキッカーM12+を最後に富士通製UNIXサーバーが打ち切りになる可能性を示唆している。UNIXサーバー市場が大きく落ち込んでいるため、富士通も見切りをつけざるを得ないのだろう」と指摘した。

 少数ながら富士通製サーバーを扱う大手SIer企業のある役員は、こうも推測する。「新聞でM12を見たとき、米オラクル製サーバーを売るのかと思ったほどだ。だが、事業部が押し切って作ったからには売らねばならない。恐らくオラクルに販売面での協力を強く要請したのだろう」。

SPARC M12の発表は異例ずくめ

 富士通はプレスリリースでSPARC M12を「世界最高性能」とうたいながらも、記者会見を開かなかった。しかも「米オラクルと全世界で提供開始」とリリースに米オラクルまで担ぎ出した。さらには、M12の1世代前のM10がFujitsuシングルブランドだったのに、対しM12本体には「Fujitsu、Oracle」のダブルブランドとした。記者会見なしで、オラクルと共同発表という異例さは、「何か裏がある」と誰しもが、訝ったことであろう。

 先の日本IBM出身の元サーバー技術者は、「今回の富士通M12を2社ブランドにしておけば、4年後に必要になる次世代SPARCサーバーを富士通製からオラクル製に切り替えたとしても、顧客はその現実を受け入れやすい。そういう軟着陸もあるのかと、富士通の戦略を賞賛したい。やめるにしても顧客に迷惑をかけてはいけないからだ。オラクルはその時点で恐らく次世代サーバーSPARC M9を登場させているはずだ」。