マルチクラウドに対応した管理サービスを提供している米ライトスケール社が興味深いユーザー調査を2017年2月下旬に発表した。回答者は1000人超で、20%はライトスケールの顧客、60%が米国のIT管理者。回答者の95%がクラウドを利用し、89%がパブリッククラウドサービスを、72%がプライベートクラウド、67%がハイブリッドクラウドを利用しているという。

 回答者が2016年中に利用したパブリッククラウドベンダーについて見ると、米アマゾン・ウェブ・サービスのAWSが1年前の調査と同じ57%を維持しトップであるのに対し、企業向けに強いとされる米マイクロソフトのMicrosoft Azureが前年の20%から34%へ急伸している。同様にグーグルのGoogle Cloudが5ポイント増え15%、IBMも1ポイント増加し8%となった。

大企業の顧客に強いAzure

 さらにこれを、従業員1000人以上の大企業顧客に絞ってみると、AWSを利用したと答えた顧客の比率は前年の56%から59%に上昇した。一方、Azureを利用したと答えた顧客の比率は26%から43%へと大幅に上昇している。マイクロソフトは、同社のWindowsやOfficeのフランチャイズのおかげで大企業顧客の多くに既に確立した地位を築いており、そうした顧客にはAzureの採用も勧めている。

 日本マイクロソフトの経営幹部は「AWSはスタートアップ企業やクラウドサービス企業が採用するが、Azureは大企業顧客が多いのが特徴だ。今後企業のクラウド利用が続々と解禁されていくので伸びが期待できる」とした。日経コンピュータが数年前から四半期ごと実施しているIT製品別市場調査によると、パブリッククラウドサービス市場でのAWSとAzureの売上推移は表1の通りである。3年前のAzureは、AWSの4分の1に過ぎなかったが、最近では6割に迫ってきた。この比率はライトスケール調査の利用率とほぼ同じである。

表●AWSとAzureの売上推移
表●AWSとAzureの売上推移
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 伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は先頃540社の国内企業を対象に基幹系システムのパブリッククラウド(IaaS)利用に関する意識調査を実施、2月下旬に発表した。それによると、85%の企業が基幹系システムにクラウドを利用していないものの、そのうち95%は利用の検討を進めていると回答した。今後、基幹系システムでもIaaS採用が増加の見込みと、CTCの調査は結論づけた。

 もう1つ国内調査でMM総研が2016年12月上旬に発表したクラウド調査によれば、パブリッククラウドサービス(IaaS/PaaS)の利用223企業中、AWSが34%に対してAzureは20%、Google Cloudが11%、富士通クラウドが10%。また利用検討中129社の中では、Azureが26%、AWSが20%、富士通クラウド16%、IBMが13%となっており、企業のAzureへの注目度が高い結果となっている。

 これらの調査結果から、クラウドリーダーのAWSについては次のことが言えそうだ。「スタートアップ企業の信用を失わずに、はるかに規模が大きい法人市場にAWSをアピールすることが重要な戦略となる」。一方、先の日本マイクロソフト経営幹部のコメントにあるように、大企業顧客への売り込みに拍車をかけているのがAzureである。「AWSからAzureへ移行するユーザーもあり、対戦成績で見れば、マイクロソフトはかなり健闘している」(日本マイクロソフトの経営幹部)という。