多くの日本企業は今、変化の激しいビジネス環境に俊敏に適応し続けられる柔軟なビジネスモデルへ移行しようとしています。

 そのためには、ビジネスや組織の課題を明らかにし、改革の方向を見定め、新しいビジネスモデルの実現方法の青写真(設計図)を描くことが求められます。

 同時に、クラウドコンピューティングやIoT(インターネット・オブ・シングズ)といったIT環境の劇的な変化に伴い、従来の枠を超えた新しい情報システムが必要になります。

 そのためには、ビジネスモデルと対になる、テクノロジーモデル、すなわちITアーキテクチャが求められます。

 ビジネスモデルの青写真とITアーキテクチャを包含したものが「エンタープライズ・アーキテクチャ(EA)」です。そしてEAをまとめ、維持し、進化させていく力を持つ専門職「ITアーキテクト」が今まで以上に重要になっています。

 ところが、ITリサーチ大手、米ガートナーが2013年に調査した結果によると、ビジネスに最も大きなマイナス影響を与える要素として、EAに関するスキルや経験、能力の不足が指摘されました。

 日本においても、ITアーキテクトの役割の定義や効果的な育成への取り組みはまだまだの状態で、今まさに注力すべき時ではないでしょうか。

 かつて日本でEAへの取り組みが多く見られた2000年前後、EAのフレームワークや手法が注目されましたが、ビジネスからテクノロジーまで幅広い領域をカバーする、汎用性の高い知識とスキルを持ち合わせたITアーキテクトの育成が十分であったとはいえません。

ITアーキテクトのスキルを定義する

 EAの取り組みを実践できる専門職としてITアーキテクトのスキルを定義し、育成を支援している団体があります。2002年に設立され、米国テキサス州に本部を置く、国際的な独立非営利団体(NPO)のIasa(アイサ)です。