ソフトウエアの構想、企画、設計、開発、保守のやり方をどう良くしていくのか。ソフトウエア人材の将来像はどのようなものになるのか。日本製ソフトウエアを輸出できないのか。本連載『ソフトウエア、それが問題だ~Software Matters』では、ソフトウエアの諸問題と対策を日本や世界の論客の方々と考えていく。

 第1回として米カリフォルニア大学バークレー校のRoberte E.Cole(ロバート・コール)名誉教授の寄稿を掲載した(「日本のリーダーはソフトウエアの本質を理解していない」)。第2回は新谷ITコンサルティングの新谷勝利代表に執筆いただいた(「自己研さんは重要、だがそれだけで人は育たない」)。

 今回は企業情報システムとそれを支えるソフトウエアを再構築する際に重要な役割を果たすエンタープライズデータモデルに関する寄稿を紹介する。なお、本連載に関する感想、ソフトウエアに関するご意見のある方はITpro編集部へお寄せいただきたい。

(谷島 宣之、八木 玲子=Software Matters担当)

 「企業全体でデータの重複を無くし、情報システム資産をスリムにしたい」
 「事業環境の変化に柔軟に対応できるデータ構造を検討していく」
 「マスタデータを統合し、複数のシステムにまたがってデータの整合性をとりたい」

 以上のような要請から、企業の中にデータアーキテクトやそのチームを置き、「エンタープライズデータモデル」を策定するとともに、顧客や商品をはじめとした重要なマスタデータの統廃合を検討する企業が出てきている。

 これらの取り組みを「データマネジメント」と呼ぶ。各社がデータマネジメントに取り組むきっかけの多くは、基幹系情報システムの再構築など、大規模プロジェクトの実施である。

 実際、企業各社において大規模なプロジェクトを進める動きがここ数年見受けられるようになっている。リーマンショックから10年弱が経ち、経営が安定し、当時凍結したプロジェクトを再開できる企業が出てきたのだと思われる。

 日本国内でデータマネジメントへの取り組みが見られるようになったのは良い傾向である。そうした企業にインタビューしてみると「DMBOK Guideを読んで勉強している」という答えが多く、DMBOK Guideがデータマネジメントの普及に一役買っていると感じている。