ソフトウエアが重要であり、それを担う人材を登用すると日本の経営トップは公言しているのか。これは米カリフォルニア大学バークレー校のRoberte E.Cole(ロバート・コール)名誉教授による問題提起である。

 コール氏はITpro読者の質問に答え、この問題を提起した。トヨタ自動車など日本企業の研究で知られるコール氏が『日本のリーダーはソフトウエアの本質を理解していない』という一文をITproに寄稿したところ、読者から意見や質問が寄せられた。これらに対し、コール氏から冒頭の問題提起を含む回答が届いたので紹介する。

 まずITpro読者の質問ないし意見と英訳を、続いてコール氏の回答と日本語訳を掲載する。新谷ITコンサルティングの新谷勝利氏が英訳と日本語訳を担当した。

 本連載『ソフトウエア、それが問題だ~Software Matters 』は、ソフトウエアの諸問題と対策を日本や世界の論客の方々、そしてITpro読者と考えていく場である。コール氏と読者とのやり取りに関する感想、ソフトウエアに関するご意見を編集部にお寄せいただきたい。 

(谷島 宣之、八木 玲子=Software Matters担当)


読者から寄せられた意見

 寄稿で指摘されていた通り、IT駆動の新ビジネスのスピード、ダイナミズムを比べると日米に大きな差がある。かつてマーク・アンドリューセン氏は米国が持つ優位として「研究に優れた大学、リスクをとるビジネス文化、イノベーションを求める資本の厚み、ビジネスと契約に関する信頼性ある法律」を挙げたと紹介されていた。確かにこれらの点のすべてに日本は課題を持つ。日本が動き出すためには、カネとヒトを何かに集中させる必要がある。どこから手を付けるとよいだろうか。

読者意見の英訳
As being pointed by you, there seem to be big differences between Japan and US on speed and dynamism for new IT-driven businesses. On all the aspects of those by Marc Andreessen on great research universities, a pro-risk business culture, deep pools of innovation-seeking equity and reliable business and contract law. Japan has big problems. For Japan to kick-off, it is needed to concentrate on money, people or any others. Which one do you recommend to tackle with?

コール氏の回答と日本語訳

As you point out, there are many avenues to pursue in order to promote IT in both existing and new businesses, in traditional service sector businesses, manufacturing and even agriculture. Which approach should take priority?

 ご指摘のように、既存ビジネスと新規のビジネス、伝統的なサービスセクターにおけるビジネス、製造業、さらには農業において、ITを推進するには多くの道がある。どの道を優先すべきだろうか。