システム構築プロジェクトを成功させるには何が必要か。この問いに対して、「経営目標や事業計画を反映させたシステムグランドデザインを策定する」「RFP(提案依頼書)を用いて調達する」「投資対効果を定量的に評価する」「ステアリングコミッティーを設置する」「PMOによる第三者チェックを適宜行う」――といった施策を挙げることができるだろう。

 もちろんこれらの「大きな施策」は重要である。大規模な案件だけでなく、たとえ小規模なシステム構築であっても規模なりにこれらの施策を実施すればプロジェクトの成功率は確実に高まる。では、これらの大きな施策を立ち上げさえすれば、それで成功が約束されるのか、といえば否である。当たり前だが、これらの施策をきちんと回さなければ意味がない。上手に回すために必要なのは「小事徹底」であると筆者は考えている。

 小事徹底の代表例を一つ挙げよう。スケジュール管理において、進捗会議などでタスクの締め切りや提出物の期限を相談して決めることは日々発生する。スケジュール管理に四苦八苦して遅延が発生しているプロジェクトチームと、きちんとスケジュールをキープしているチームとでは期限設定の作法が明らかに異なる。ダメなチームの会議では「今週中にやっておきます」「来週の半ばくらいに出す予定です」といった回答がほとんどだ。

「来週の半ば」とは一体いつ?

 これらの回答はスケジュール管理上、あまり役に立たない。「来週の半ば」とはいつなのか。「半ば」といえば水曜日をイメージする。半ば「くらい」と含みがあるから火曜日から木曜日の間かもしれない。しかも「予定です」ということなので翌週にズレる可能性もあることか。このような曖昧な回答でタスクやスケジュールの管理を行えば、進捗は毎日少しずつ遅延が発生し、それが雪だるま式に増えていくことは容易に想像できよう。

 一方、スケジュール管理が上手なチームは「来週の水曜日の15時までに提出」と明確に日時指定することを徹底している。水曜日という日の指定だけでは不十分である。必ず「水曜日の15時」のように時間指定するのが肝要なのだ。それはゴールが明確でないと、先送りを増長してしまうことや担当者が勝手に余分なバッファーを取ってしまうといったスケジュールリスクが生じるからである。また同じ日でも10時提出、15時提出、18時提出ではそれぞれ全く意味合いが異なることは説明せずとも理解いただけよう。

 発注者側のプロジェクトマネジャーが第一にやるべきは、まず自分自身とエンドユーザーを含む自社のプロジェクトメンバーに「日時指定」のルールを徹底させることだ。

 次に、ベンダー側にもそのルールを順守してもらうよう働きかける。ベンダーによってはすでに日時指定が習慣になっている会社もあるが、まだまだ多数とは言えない。だから発注者はベンダーが「今週中にやります」という回答をしたならば「今週金曜日の18時までにお願いします」と必ず日時指定でコミットメントを求めてほしい。

 大きな施策であればあるほど小事徹底してこそ、それが機能し、効果が生まれるのである。