「何を、いくらで、いつまでに」。これをはっきりさせるのが、筆者がRFP(提案依頼書)の基本としている事柄だ。「何を=どんなシステムを」「いくらで=予算」「いつまでに=納期」である。

 これまでは3つの基本の中でも「何を」と「いくらで」が発注者にとってもベンダーにとっても重要度が高く、「いつまでに」は若干プライオリティが低い感じがあった。ところが最近になってこの「いつまでに」の重要度が高くなり、他の2つに並んだか、上回る場合さえあると思っている。

 「いつまでに」を分解し、発注者が希望する本番稼働時期から想定構築期間を逆算して、システム構築プロジェクトのキックオフ時期を決めるという方法がある。例えば、本番稼働時期が2019年4月であり、システム構築期間を1年前後とすれば、キックオフは2018年4月~5月くらいに設定する。「これならば年明け1月から3月まで3カ月で調達活動をして、3月に依頼先ベンダーを決定すればちょうどよい」と考えがちだ。しかし、その調達スケジュールではベンダーがプロジェクト要員の確保をコミットできないリスクが発生するだろう。

 このコラムでも過去に何度か言及しているが、IT業界は慢性的に人手不足である。「仕事量>人手」の状態がずっと続いている。採用力の高い大手ベンダーが積極的な中途採用を行っているため、特に中堅以下のベンダーは人を増やしたくてもなかなか採用できないのが現状だ。

 「働き方改革」の浸透も無視できない。IT業界といえば長らく3K業種といわれてきた。「きつい、厳しい、帰れない」の3Kである。人手不足の状況で社員に辞められたら困る。有力ベンダーが「高給+働き方改革」の待遇を打ち出して採用を進めている状況で、3Kのまま仕事環境を放置したら、それこそ草刈り場になってしまう。だからこそ脱3KはITベンダーの経営者にとって最優先の課題となっている。

 極端な言い方をすれば「人さえいれば仕事はいくらでもある」という状況なので、発注者が「仕事を出すのだから、こちらの希望したスケジュール通りに始めてくれるだろう」と安易に考えてもそうはいかない。