Q.後輩と二人で利用部門に要件をヒアリングしました。普段通りに進めたつもりでしたが、後になって相手から「圧迫感があった」というクレームを上司経由で受けました。何がいけなかったのでしょうか?

 複数のメンバーでヒアリングをするときは、一人のときよりも相手に圧迫感を与えやすくなります。ヒアリングをする側に工夫が求められます。  お勧めしたいのは、それぞれがどのように振る舞うのか、役割をあらかじめ決めておくことです。特に対照的な役割を用意するとよいでしょう。

 役割を分担すると、例えば一方が鋭い指摘をした後に、もう一方がフォロー役に回ることで相手の心理的負担を和らげられます。また、工夫次第では聞きにくいことも聞きやすくなります。以下では、二人でヒアリングするケースを想定し、役割のコンビネーションの例を三つ紹介しましょう。

 一つは「味方役」と「敵役」です。交渉術としても有名な「Good Cop, Bad Cop(良い警官・悪い警官)」のコンビネーションですね。

 刑事ドラマの取り調べシーンで、高圧的に厳しく尋問する悪い刑事役と、優しく接する良い刑事役を目にしたことがあるでしょう。容疑者に「良い警官とは協力関係が結べる」と期待させ、良い警官役に様々な情報を話させる効果を狙ったテクニックです。

 このテクニックは、要件のヒアリングにも大いに応用が利きます。例えば一方は質問を極力控え、共感・受容モードを強めて聴き役に徹します。もう一方は、相手の発言を冷静に分析し、矛盾点を確認したり、検証したりしていくとよいでしょう。このコンビの場合、良い警官モードを意識して強めたほうが相手は話しやすくなります。

あえて「若気の至り」をしでかす

 二つめは若手とベテランです。これも刑事ドラマでよく見られます。

 一般に、質問を受ける側はベテランを警戒し、若手には気が緩みがちな傾向があります。また、若手には普段よりも多く話そうとする相手も少なくありません。「教えてあげよう」というスイッチが入るためでしょうか。

 これらの傾向を利用します。例えば若手役が「若気の至り」を装った率直な質問をしましょう。ベテランが「まあまあ」と取りなしながら、反応を観察して質問を重ねていきます。

 ただし、若手とベテランの位置づけは相対的なものです。例え「この分野は10年のベテランだ」と自負していても、それ以上のキャリアを積んでいる相手にヒアリングをする場合は、ベテランとして振る舞うのは避けたほうが無難です。中堅として振る舞うなど、自分の役割を柔軟に変えましょう。

 三つめのコンビは「素人」と「玄人」。専門性の違いで役割を分ける方法です。営業担当者とITエンジニア、プロジェクトマネジャーとITアーキテクトなど、専門性の違うペアでインタビューする場合に活用できます。

 専門性を生かせる領域では、「玄人」が質問しましょう。事例を提示したり、比較したりしながら質問します。「A社のデータベースをクラウドで稼働させると、I/O性能の課題が発生しがちです。御社はいかがですか」といった具合です。質問によって、相手にこちらの力量も伝えられます。

 ただし、玄人ばかりがよいわけではありません。「素人」であれば、玄人では出しにくい素朴な疑問を投げかけられます。素朴な質問が、硬直化して解決困難に思える問題や課題の突破口になることもあります。「この分野は詳しくないため素朴な疑問を口にさせていただきますが…」と、前置きをしてから話すとよいでしょう。