Q.会議の発言をしっかりと聞いてメモを取り、メモを基に作成した議事録を上司に提出しています。しかし、「ここやここの意味がよく分からない。確認してきて」と突き返されることが多いです。どうしたらよいのでしょうか。

 人は考えや事実などの情報を事細かに正確には話せません。言葉にする段階で情報を削ったり、加工したりしています。このため話し手の発言をあなたが聞き漏らさず、忠実に文字に起こしたとしても、分かりにくいというケースが少なくありません。

 そこで、人が話すときにどのように情報を削ったり、加工したりしやすいのかを知っておきましょう。それらを確認して補うことによって、話の内容が正確で分かりやすくなるのです。

情報を削ったり、加工したりするパターンは大きく三つ

 人が話すときに情報を削ったり、加工したりするパターンは大きく三つに分類できます。(1)省略、(2)歪曲、(3)一般化です。

 (1)の省略は文字通り、言葉を省いて話すこと。典型例は5W1Hのいずれか、または複数を省略するケースです。「いつ(When)」「どこで(Where)」「誰が(Who)」「何を(What)」「なぜ(Why)」「どうしたのか(How)」の各要素のうち、相手の話で足りなかったことを確認しましょう。

 比較対象も省略して話しがちです。「業務効率が悪い」といった表現ですね。この場合は「何と比べて(いつから)効率が悪いのですか」など、比較対象を明確にする質問をしましょう。

 また、抽象度の高い動詞表現も要注意です。「A部門とB部門が連携している」のような表現です。連携は抽象度が高く、具体的に何をするのかが分かりません。一方、話し手にとっては当然のことなので連携の内容を省略しがちです。何の情報を、どのような手順で、どのくらいの頻度でやり取りしているのかを聞き出す必要があります。

 (2)の歪曲は、何らかの事実情報をありのまま伝えず、個人の価値観などのフィルターを通して表現することです。例えば「システムの応答性能が低下した」という事実に対し、「RDBのせいでシステムの応答性能が悪い」などと自身の憶測を付け加えて伝えるケースが歪曲に当たります。また、「うちの部門は社長から評価されていない」のように、憶測を事実のように話すケースも歪曲の一種です。

 これらの場合には、その決めつけを「RDB以外の原因は考えられませんか」と他の可能性を確認したり、「社長が仰った内容を具体的にお聞かせください」などと具体例を求めたりして、歪曲を戻していきましょう。

 (3)の一般化は、例外を認めず、全部が絶対にこうであると話してしまうことです。分かりやすい例は、「クラスの友達全員がこのゲーム持っている」などと子供が話すケースですね。実際には数人しか持っていなくても、その数人の話を基に「友達全員」と一般化してしまったわけです。

 一般化はIT現場でも見られます。「プロジェクトメンバー全員のモチベーションが低い」「プロジェクトマネジャー(PM)は、高度な専門性を持たなくてはならない」といった発言を、あなたも聞いたことがありませんか。

 こうした一般化の発言に対しては、例外と思われることを挙げます。「確かにいつでも全部そうとは限らないけど…」といった具合に相手が自ら認めるまで、場合分けをしていきます。

 例えば「モチベーションが高いメンバーをあえて挙げるとするとどなたですか」「モチベーションが高かった時期はありましたか」などと少しずつ切り崩します。同様にPMの件では、「もし、PMが高度な専門性を持っていないとどうなりますか」といった仮定を置いて意見を引き出すのもよいでしょう。