Q.利用部門のキーパーソンから対処しにくい要求があり、代替策を提案しようと考えています。気むずかしいと評判の相手にどのように切り出したら聞き入れてもらえるでしょうか?

 相手に要望や提案を伝える際には、いきなり伝えても真意が伝わりにくく、受け入れてもらいにくいものです。まずは相手と問題意識をそろえたり、相手に共感したりした上で、提案や選択肢を伝えると相手も受け入れやすくなります。

 その手順として、「DESC法」と呼ばれる手法があります。D・E・S・Cはそれぞれ、相手とのやり取りのコツを示した頭文字です。これら四つの段階を一つひとつ相手に確認しながら進めることで認識を合わせられ、提案や行動変容の期待を受け入れてもらいやすくなります。順に見ていきましょう。

 初めのDは、「Describe(描写する)」のこと。解決しようとする問題の現在の状況や、相手の行動について「客観的」に描写します。ここで認識が違っていたら後の提案も受け入れてもらえませんから、相手の認識を確認する質問をしましょう。例えば以下のような要領です。

「会議が始まって1時間以上経ちますが、意見が減ってきたようですね」

 2番目のEは、「Express、Explain(表現する、説明する)」です。先に描写したことに対し、「主観的」な気持ちを表現したり、相手の気持ちに共感したりします。感情的に表現したり、相手を攻撃したりするようなことを言わず、共感を示すことがポイントです。例えば、こんな表現です。

「山田さんはお疲れのようですが、大丈夫でしょうか? 他の方も集中力が少し切れてきていませんか?」

具体策を出し、相手に尋ねる

 3番目の段階であるSは「Suggest、Specify(提案する、具体的に挙げる)」の意味です。状況を変えるための「具体的」で「現実的」な解決方法や代替案、妥協案を提案します。あくまでも提案ですので、強制的な表現や断言は避け、「こうしませんか?」と相手に尋ねるようにしましょう。

「今日はミーティングをここで切り上げてはいかがでしょうか?」

 最後のCは「Choose、Consequence(選択する、結論)」を表します。こちらからの提案に対して選択をしてもらいます。

 提案を受け入れてもらった場合、受け入れられなかった場合のそれぞれに対する次の行動を事前に決めておきます。その上で、提案の是非を判断することによって、状況がどのように変化するかも合わせて伝えます。

 この段階でも脅しのような言い方は避け、「こうするともっと良くなる」といった表現で双方のメリットを認識してもらうとよいでしょう。受け入れられなさそうなときには、代替案についても聞いてみましょう。

「後日集まったほうが、今日の案も冷静に考えられます。さらによい案が出てくるかもしれません。もし今日中に決める必要があるなら、いったん短い休憩を取りませんか?」

 D(描写)やE(説明、共感)がないまま、S(提案)の「ミーティングを切り上げませんか?」とだけ問いかけた場合を想像すると、相手が受け入れにくいことを理解しやすいと思います。DやEを質問形式で確認しながらSに持っていくと、唐突感や強制する雰囲気がなくなります。提案のメリットを相手が考えやすくなるのです。

 要件の受け入れの交渉や価格交渉、作業の依頼などでも使える手順ですので、一つずつ確認しながら受け入れてもらうことを目指してみてください。