電子行政に詳しく日本の自治体のCIO補佐官も務める廉宗淳(ヨム・ジョンスン)氏に、ITproの人気コラム「極言暴論!」でおなじみの木村岳史が、日本の電子行政や政府・自治体情報システムの問題点を聞く暴論対談の最終回。廉氏は日本のマイナンバー制度や自治体システムについて、韓国との比較も交えながら持論を語った。

(構成は清嶋 直樹=日経コンピュータ

イーコーポレーションドットジェーピー(e-CORPORATION.JP)の代表取締役社長を務める廉宗淳(ヨム・ジョンスン)氏(左)と、日経コンピュータ編集委員の木村岳史
イーコーポレーションドットジェーピー(e-CORPORATION.JP)の代表取締役社長を務める廉宗淳(ヨム・ジョンスン)氏(左)と、日経コンピュータ編集委員の木村岳史
(撮影:陶山 勉)
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木村前回話した佐賀市での経験なども踏まえて、廉さんは、日本のマイナンバー制度について言いたいことがありそうだが。

:私は青森市の情報政策調整監(CIO補佐官)を務めている。基礎的自治体である市町村はマイナンバーシステムの最大のユーザーであるはず。マイナンバー制度を生かしてシステムを改良したり、業務を効率化したりしたいところだ。

 だが実際には、総務省から方針が下りてくるばかりで、市が独自に取り組めることがあまりない。せいぜい「セキュリティ強じん化」にどのように取り組むかということぐらいだ(関連記事:自治体の悩み深し、佳境を迎えるセキュリティ強じん化)。これはちょっとおかしいと思う。

 もし私がマイナンバーのシステムを一から設計するなら、マイナンバーを一番使う人、使うべき人を集めて、徹底的にアイデアを出してもらう。例えば、市町村役場の窓口の人に、どういうふうに使えば便利か、業務効率が上がるかを聞く。法令や規則は度外視して、とにかくアイデアを出してもらう。

 次にその成果物をITベンダーに見せる。アイデアが技術的に実現可能かを検証してもらう。次にその成果物を法律の専門家に見せる。現状の法令で可能か、どの部分は改正が必要かを詰める。

 次にその成果物を国会議員に渡す。国会で必要な法改正を行うためだ。最後にその成果物をITベンダーに渡してシステムを構築してもらう。事前に検証済みなので、技術的に作れないということは起こらない。