電子行政はさまざまな課題を抱えている。2015年10月にマイナンバー制度がスタートしたが、システム構築は波乱含みだ。カード管理システムのたび重なる障害(関連記事)や、日本年金機構へのサイバー攻撃事件以降のスケジュールの遅れ(関連記事)など、次々と問題が噴出している。

 根本にある問題は何か。ITproの人気コラム「極言暴論!」でおなじみの木村岳史は、かねて日本の政府・地方自治体のITベンダーの間に横たわる問題を指摘してきた。今回は、その木村が、電子行政分野の論客として知られる廉宗淳(ヨム・ジョンスン)氏に外国人だからこそ見える問題点を聞いた。

 廉氏は韓国出身で、今は日本在住。システムコンサルティング企業イーコーポレーションドットジェーピー(e-CORPORATION.JP)の代表取締役社長で、青森市情報政策調整監(CIO補佐官)や総務省電子政府推進員などを務める。

(構成は清嶋 直樹=日経コンピュータ

木村:廉さんには、日本の電子行政や政府・自治体情報システム、公共システムを展開するITベンダーについて、私以上の「極言暴論」を期待している。そもそも、廉さんはなぜ韓国ではなく、日本で仕事をするようになったのか。

イーコーポレーションドットジェーピー(e-CORPORATION.JP)の代表取締役社長を務める廉宗淳(ヨム・ジョンスン)氏
イーコーポレーションドットジェーピー(e-CORPORATION.JP)の代表取締役社長を務める廉宗淳(ヨム・ジョンスン)氏
(撮影:陶山 勉)
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:私はもともとソウル市で公務員をやっていた。1990年ごろに転職・来日してソフトウエア開発の仕事をした。いつか韓国へ帰るつもりだった。

 ところが、日本で「バブル崩壊」があり、日本での仕事がなくなってしまった。韓国へ帰国したが働き口は少なく、自分でシステム会社を創業した。

 このころは、日韓のITを比較すると、日本の方が圧倒的に優れた「IT先進国」だった。この差を利用して、私のシステム会社で富士通製のパッケージソフトを韓国の名門ゴルフ場に納入するなどの事業を展開した。電子行政という点でも、日本が韓国を圧倒していた。これを利用してNECの運転免許証関連システムを韓国に持ってきたり、富士通の国民健康保険システムを韓国に持ってきたりといった案件に携わった。