Wi-Fiは家庭やオフィス以外に、工場やコンテナヤードなどの特殊な産業の場でも利用されている。工場内を走り回る自動搬送車やコンテナヤードで操業するトランスファークレーンの制御、それらの装置が出す統計情報などの送受信に利用されることもある。こうしたシーンで送られる情報は、工場の稼働状況に関わる重要なものであるため、Wi-Fiの通信品質を高く保つ必要がある。

 しかしWi-Fiは遮蔽物による影響を受けやすく、大型機械が多く存在する場所では電波強度がまだら模様のようになり、通信品質がばらつきやすい。こうした場所では、図1のように複数のAPを設置して電波強度がまだら模様のようにならないようにする。だがこの手法を使うと、多数のAPが必要となり手間もコストもかかる。

図1●遮蔽物の多い工場の生産ラインなどを想定したAPの設置例。これはかなり極端な例である
図1●遮蔽物の多い工場の生産ラインなどを想定したAPの設置例。これはかなり極端な例である
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 こうした課題を克服する一つの方法として使われているのが、漏洩同軸ケーブル(LCX:Leaky Coaxial Cable)を利用する方法だ。LCXは、ケーブル型のアンテナのようなものである。APのアンテナ端子にLCXをつなぎ、図2のように設置するとケーブルから電波が漏れ出るようになっている。

 だが果たして、ケーブルから“漏れ出る”電波はきちんと端末まで届くものなのだろうか。そもそも、アンテナを使わず、あえて電波が漏れ出るケーブルを使う意味はあるのだろうか。

図2●遮蔽物の多い工場の生産ラインなどにLCXを設置した例
図2●遮蔽物の多い工場の生産ラインなどにLCXを設置した例
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