本連載の前回で紹介した実験では、Wi-Fi(無線LAN)でローミングを実行するタイミングを判断しているのは、アクセスポイント(AP)ではなく端末側であることが分かった。また、端末によってはなかなかローミングせずに、通信断の発生後しばらくしてから、ようやく次のAPへ接続先を変更することが明らかになった。

 Wi-Fiのローミングにおける動作は、端末によって違いがある。さらには同一の端末でも、設定によってローミングのタイミングが変わってくることがある。そのため、全ての端末のローミング実行タイミングを管理するのは非常に難しい。

 とは言っても、APと端末の距離が離れるほど、無線通信の誤りが多くなり、データの再送も増える。結果的に、帯域を逼迫する原因にもなる可能性がある。端末がローミングを実行するのを待ち続けるのも問題である。

 それならば、AP側から端末へローミングを促すことができれば理想的だ。企業向けAPの一部には、こうした動作が可能なものがある。そこで今回は、ローミングを促す方法の1つとして、APに実装されている機能(※)を確認してみよう。

* このような機能はAP単体で提供しておらず、ワイヤレスLANコントローラーが必要な場合が多いため注意いただきたい。

電波が弱くなったら強制切断する機能を試す

 今回実験するローミング支援機能は、「端末が利用中のAPから徐々に離れて行き、一定のしきい値を超えた場合にAPから端末に切断フレーム(Disassociation)を送信する」というものだ。

 APのメーカーは、こうしたローミング支援機能を、それぞれ独自の方式で製品に実装しているが、おおよその動きは似ている。図1のように、端末から送信されるフレームの電波強度を確認し、あらかじめ設定したしきい値を下回ったかどうかでローミングするタイミングを判断している。

 ただし、電波強度がしきい値を下回ったフレームが1個出たら、すぐに切断するというわけではない。数秒間で、一定のパーセンテージを超えるフレームの電波強度がしきい値を下回った場合に、切断フレームを送信するようになっているAPが多い。切断フレームを受け取った端末は、これまでつながっていたAPとの接続が無くなったため、最も近いAPなどを選択して再度、接続処理することになる。

 結果的に、遠くのAPをつかみ続けてしまうということを抑止できるのだ。

図1●ローミングを促す切断フレームの発動イメージ
図1●ローミングを促す切断フレームの発動イメージ
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