米国大統領選挙は、カリフォルニア州に住む筆者からすると、衝撃的な結果だった。他のシリコンバレーに住む投資家や起業家も語る第一声は「まさか」だった。

 得票数ではヒラリー・クリントン氏が上回っていたが、人口の多い州での得票が上回った結果である。結果が逆転するのは、米国の大統領選挙の制度上あり得る話だ。むしろ勝利を収めたドナルド・トランプ氏は、選挙戦略上、負けると分かっていたカリフォルニア州は最初から捨てていたかもしれない。

 確かにトランプ氏は、メディアが流す世論調査の結果が「デタラメだ」と指摘し続けていた。加えて、クリントン氏に関する様々な「デタラメ」もセットで喧伝(けんでん)していたことから盲点になっていたが、世論調査の件に関しては、デタラメではなかったのかもしれない。

バークレーにも衝撃

 筆者はカリフォルニア州バークレー市に住んでいる。この地の歴史をひも解けば、どう考えても、トランプ氏支持にはなり得ない。米国で最もリベラルな街の一つであり、ベトナム戦争時に、米国発の学生運動が発祥した地でもある。

 その後、あらゆる多様性を重んじ、食、健康、エコ、エシカルといった社会や地球を含む人類の生活のことに向き合う街だ。その街に伝わったトランプ氏勝利の報は、大規模な反対デモまで巻き起こした。

 幼稚園の先生は保護者にメールを出し、トランプ氏勝利で気落ちしている生徒がいることを伝え、ケアを呼びかける。筆者のアパートの隣人同士でも、ショックを共有し、トランプ大統領時代をどのように乗り切っていくのか、重い口を開き始めている。コミュニティーの結束はさらに強まったかもしれない。しかし決してポジディブに受け止めることができない、そんな状況だ。