米アップルは2017年6月5日から9日までカリフォルニア州サンノゼで、世界開発者会議「WWDC 2017」を開催した。基調講演では、6つのテーマを紹介する盛りだくさんぶりで、各種OSとハードウエアのリリースに会場は沸いた。

(撮影:松村 太郎、以下同じ)
(撮影:松村 太郎、以下同じ)
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 WWDCはソフトウエア開発者に向けたOSやAPIなどの最新情報の提供、技術的なサポートが受けられるハンズオンなどが主題だ。今回は、75カ国から5300人が集まったという。アップルは、開発者コミュニティが2016年から300万人増えて1600万人になったとしている。非常に競争率の高い抽選を勝ち取った開発者が集まったことになる。

 最年少の参加者は10歳、最高齢は82歳の日本人女性であることも紹介された。開発者が主役であることから、ハードウエアの話題は本来扱わなくてもよいくらいで、2016年のWWDCではハードウエアは一切登場しなかった。

 しかし今年のWWDCでは、MacBook Proの刷新、iMacの刷新、iMac Proの紹介、iPad Pro 12.9インチの刷新と10.5インチモデルの投入、そして12月に発売されるSiri搭載スピーカーHomePodの紹介と、たくさんのハードウエアが登場した。

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 ただしいずれも、新OSの実力を引き出すハードウエアという位置付け。Appleのハード・ソフトを連携させるメリットを最大限に示した格好だった。

 今回のアップルのWWDCは、個人的には「満額回答」という印象を受けた。各OSやハードウエアに関して、その理由に触れていこう。

OSのフォーカスは、機械学習へ

 前回の連載では、AIを処理するプロセッサの可能性について米国のニュースを紹介した。しかし今回のWWDCでは、そうしたプロセッサの登場はなかった。ただ、発表内容はそれ以上だった。

 アップルは今回発表した各種OSに、機械学習のAPIとなる「Core ML」を搭載した。前述のような特別なチップは必要ないが、デバイス内での機械学習や人工知能に関する処理を高速化できるという。つまり、追加のチップを必要とせず、既存のAシリーズのプロセッサでの高速化を実現するように、ソフトウエアとハードウエアの連携を強めたのだ。

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