米アップルは2017年6月5日(現地時間)、カリフォルニア州サンノゼで年次開発者会議「WWDC 2017(WWDC17)」を開催した。

 事前に注目されていたテーマの一つが人工知能(AI)関連だった。WWDC直前にBloombergは次期iPhone/iPadにAI処理を行う専用チップを搭載すると伝えていた。結局WWDCでは具体的な発表はなかったが、今後の動きが気になるところだ。

 現在、AIを処理するプロセッサに関しては、米グーグルが披露した「TPU」や、米エヌヴィディア(NVIDIA)のディープラーニング向けGPUなどが注目されている。グーグルによると、TPUは消費電力当たりのパフォーマンスで他のプロセッサの10倍もの性能を発揮するという。

 これらはスーパーコンピュータやサーバー環境などに導入される大規模処理向けのプロセッサだ。一方でBloombergの報道によれば、アップルのAIチップはiPhoneやiPadといったモバイルデバイスに内蔵されるという。アップルは、グーグルやNVIDIAと根本的に異なるアプローチをとることになる。

プライバシー重視のアプローチ

 コンピュータ処理は一般に、手元のコンピュータよりも、データセンターに格納された膨大な台数のコンピュータによる処理、すなわちクラウドによる処理のほうが高速になっている。しかしアップルは、ユーザーのデータをなるべくiPhoneの外に出さずに処理することを目指す。プライバシー重視の考え方から、こうしたアプローチを取っている。

 写真の分析で比較すると分かりやすい。例えばグーグルの写真サービス「Googleフォト」は、一度クラウドに写真をバックアップしたうえで、顔の認識や被写体の分類などをしている。一方でアップルは、iPhoneやiPadの中で写真を解析し、顔認証や被写体分類、シーン解析などの処理を実行している。インターネットにつながっていないiPadで写真を撮っても、きちんと分類される。

 バックアップという点では、クラウドに写真が残っているほうがモバイルデバイスの紛失や破損からデータを守れるため、安心な面もある。実際、アップルも「iCloud」で写真を管理する方法を提供している。