前回は、米アップルが2017年3月下旬に発売した第5世代となる新型「iPad」について読み解いた。米国で329ドル(日本では3万7800円、税別)からという価格設定は大きなポイントだ。

写真1●2017年3月下旬に発売された第5世代「iPad」
写真1●2017年3月下旬に発売された第5世代「iPad」
(出所:米アップル)
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 新型iPad(写真1)には高性能の「A9プロセッサ」が搭載されたものの、ディスプレイは「True Tone」など最新仕様を盛り込まない通常のRetinaディスプレイの搭載とされた。新型iPad登場後も、薄さ、軽さ、プロセッサ、ディスプレイ、スピーカーなどの仕様面において、2015~2016年に登場した12.9インチ、9.7インチの「iPad Pro」が最上位機種という位置づけは変わらない。

 新型iPadは従来の「iPad Air」シリーズの進化から外れ、価格の安さを訴求することになった。マーケットからの要請による製品、つまり、大量導入しやすい安価なタブレットに対するニーズに応える製品と捉えるのが自然だろう。

 裏を返せば、1年〜1年半前のモデルが最上位機種を引き続き務められるほど、iPadを取り巻く環境は停滞していると言える。

教育市場に意欲的なアップル

 アップルはしばしば、教育市場に対する情熱を語る。簡単ですぐに使えて、教員や生徒の創造性や効率性を最大化するコンピュータの提供は、同社の遺伝子(DNA)に組み込まれている──。こんなメッセージを目にすることは多い。

 iPadは教育市場を攻略するための有力な武器であるはずだった。しかし昨今の「Mac」やiPadは、米グーグルの「Chromebook」に押されているのが実情だ。