米アップルは「iPhone」を、1年間に2億台近く製造している。薄利多売とは無縁の高付加価値製品として成功。スマートフォン業界の利益全体の90%以上を占め、ほぼ唯一の勝者と言える。

 世界中のより良い部品を、大量に有利な価格で調達して組み立てるのが利益の源泉になっている。アップルのCEO(最高経営責任者)であるティム・クック氏の経歴をたどると、米コンパックコンピュータ(当時)の最高購買責任者(CPO)というポジションが浮かび上がる。クック氏はアップルに転じてから、ファブレス化やサプライチェーンマネジメントの強化、製品在庫の圧縮などに取り組み、強靱な企業体力を育んできた。

 ただ、2016年のアップルは思うように製品の出荷ができていなかったように見受けられる。ライバルである韓国サムスン電子が「Galaxy Note 7」の発火事件で失速したことにより、アップルの「iPhone 7 Plus」の生産は追いつかない状況。ワイヤレスヘッドホン「AirPods」は2カ月近く出荷が遅れた。「MacBook Pro」の「Touch Bar」内蔵モデルも同様だ。

 3カ月に7500万台を販売するスマートフォンを作りながら、同時にMacを500万台作り、さらに「Apple Watch」やAirPodsといった機器を数百万台規模で作るというのは大変なことだ。アップルの顧客は辛抱強く待つ確率が高いかもしれないが、それでも「売れるのにモノがない」という状況は機会損失につながる。新しいテクノロジーの開発や部品の調達、確実な製造といった体制について、今一度見直したり、引き締めたりするべきタイミングに差しかかっているようだ。

 アップルがiPhoneを含む製品群を安定供給するために不可欠な部品の一つが、フラッシュメモリーである。この分野で再編に向けた動きがある。