米アップルの次期「iPhone」に関する噂は、ネットメディアにとって“打ち出の小づち”のようなものだ。米国でも日本でも、テクノロジー専門メディアでも一般消費者向けメディアでも、年中続く関心事である。「ページビューがかせげる」ネタでもある。

 噂の出所は、主に中国、そして日本を含むアジア圏だ。現CEO(最高経営責任者)のティム・クック氏は、前CEOのスティーブ・ジョブズ氏に引き抜かれて、米コンパックコンピュータ(当時)のCPO(最高購買責任者)からアップルへと転じた経緯がある。

 クック氏は、アップルのファブレス化とサプライチェーンのシンプル化・地理的集約に取り組んだ。その結果、アップルの部品調達や製品製造の動きがあれば、アジア圏の生産拠点周辺から情報が出てくるようになった。

 例えば2017年2月中旬には、アップルが韓国サムスン電子傘下のディスプレーメーカーに対して、次期iPhoneに採用する有機ELパネルを合計1億6000万枚という規模で発注したと報じられた。

 スマートフォン分野でアップルのライバルであるサムスンは、重要なサプライヤーでもある。自社の評判を良くしたり株価対策をしたりするのに、iPhoneにまつわる噂を活用している、と見ることもできる。

公式情報からも動きが分かる

 ただし、噂ばかりに頼らなくても、アップルの公式発表や、アップル周辺の公開情報をよく見ていれば、そこから何かが起こっていることを察知することも可能だ。

 例えば2月中旬の時点で、アップルのWebサイトを見ると、「iPad Pro 12.9インチ」と「iPad Air 2」について、納期が10日に延びていると分かる。「iPad Pro 9.7インチ」「iPad mini 4」なら即日配送できる。iPadのうち2機種の製造に何らかの遅れが生じていると推測することも可能だろう。