米アップルは忙しい年末年始を過ごした。2017年12月2日から発生した「再起動問題」(通知バグ)に関して「iOS 11.2」を前倒して配信したほか、年末にはiOSが旧モデルのiPhoneのパフォーマンスに制限をかける機能が問題となった。さらに年明けには世界中を揺るがしたCPUの脆弱性問題(SpectreとMeltdown)へのセキュリティアップデートを実施した。これらのうち、iPhoneのパフォーマンス問題を取り上げたい。

シャットダウンを避けるために導入

 同問題は、米国のニュース掲示板「Reddit」で、旧モデルのiPhoneのパフォーマンスが下がっている点を指摘する記事が掲載されたことに端を発する。これに対して、著名ベンチマークソフト「Geekbench」の開発者であるカナダのPrimate LabsのJohn Poole氏がブログポストで、多くの「iPhone 6s」がパフォーマンス低下の影響を受けていると指摘した。

 こうしたネット上での議論をアップルが認め、ユーザーに対してウェブサイトで説明した。同社によると、バッテリーの経年劣化とプロセッサの関係において、パフォーマンスが低下するような機能をiOSに盛りこんだとしている。

 バッテリーはアップル製品に限らず「消耗品」であり、充電と放電を繰り返せば劣化していく。同社によると、500回の充放電の繰り返しで、満充電時の容量が8割未満に低下するという。これ自体は一般的なリチウムイオンバッテリーの性能から大きく外れるものではないと考えられる。

 さらにバッテリー性能は温度環境などでも影響を受け、特に寒冷地での性能が低下する点も現在のバッテリー技術上、一般的なことと言える。こうしたバッテリー特性を踏まえ、アップルがiPhoneのパフォーマンスに制限をかける理由は次の通りだ。

 バッテリーが劣化したiPhoneが最大パフォーマンスで動作する場合、要求される電力にバッテリーが応えられなければiPhoneがシャットダウンし、デバイスや回路を保護する。しかし、これではユーザー体験を著しく下げるため、パフォーマンスを管理し、シャットダウンを防ぐ仕組みを導入したという。

 この仕組みは2017年1月に配信した「iOS 10.2.1」から導入しており、当時の対象デバイスは「iPhone 6/6 Plus」「iPhone 6s/6s Plus」「iPhone SE」だった。さらに2017年12月に配信した「iOS 11.2」からは「iPhone 7/7 Plus」もパフォーマンス管理の対象に加わった。おそらく1年後には「iPhone 8/8 Plus」「iPhone X」も対象になるだろう。

 ただしアップルは、多くのユーザーが同制限に気付くことは「まれ」と説明している。ピークのパフォーマンスを制限する一方で、低消費電力で動作する普段のパフォーマンスを下げるわけではないためだ。