情報システムのノーダウンを実現するためには、はたしてどうすればよいのであろうか。一般的に行われているのは、ITインフラとして事業者のクラウドサービスを利用すること、そしてハードウエアやソフトウエアによるシステムの二重化およびネットワークの二重化を進めるという手法である。

 しかしこうした手法でどれだけ「ノーダウン」が実現可能なのであろうか。 二重化すること自体は意味のあることであり、それにより相応にシステム障害を防げることは確かだ。そして残念ながら、これだけでは対応しきれない部分があることも事実である。

 例えば、デッドロックによるシステム停止。デッドロックとは、データベース(DB)の排他制御機能が働いてその結果としてプログラムが次の処理を進められなくなり、システムが実質停止してしまう状況のことをさす。これはそうした状況になることを想定していなかった、一種の不具合であるが、いくらハードやソフトを二重化しても防ぎようがない。クラウド事業者のITインフラにも100%はない。

 また、インターネットなどを通じて配信されるソフトウエアはどうだろう。どこまで信頼できるのだろうか。サーバーやクライアントのOSは、機能修正や追加機能のソフトをネット経由で配信するが、トラブルになることは珍しくない。

「審判の審判」を設ける

 こうしたトラブルに巻き込まれるのを防止し、ソフトウエアのバグやハードウエアの故障があっても、システムを停止せずに稼働させつづけるにはどうすればよいのか。特に銀行やクレジットカード会社を始めとした金融機関、病院などのシステムは、突然停止した場合の影響が極めて大きい。

 ところで話は変わるが、ブラジルのリオで開催されたオリンピックで、日本の柔道選手たちは大活躍で、男女でメダルが合計12個を獲得した。この柔道という競技に、「審判の審判」が存在していることをご存じだろうか。

 「ジュリー制度」と呼ばれる制度によるものだ。試合には、主審1人副審2人のほかにジュリーがおり、判定が適切であるかどうか指摘する。過去に「誤審」が大きな騒動になったことから、設けられた制度だ。一般的に人間の判断にミスはつきもの。柔道という競技における一瞬の勝負を判定する審判がミスをするケースを想定し、一歩下がったところに臨席するジュリーが、ビデオなども駆使しながら、正しい判定に導こうとするものだ。