「このままでは日本のIT(情報技術)の未来は、かなり危うい」――。大手銀行やクレジットカード会社で大規模システム開発プロジェクトのプロジェクトマネジャー(PM)を歴任した船串 文夫氏が、危機的状況にある日本企業のIT部門、IT業界の問題点とその原因を、厳しく論じる。(編集部)

原因2:次世代システムを新規に構築しようとする

 設計・開発を行う実務担当者には、「次世代システムを構築する」という場合に、既存システムの修正やパッケージのカスタマイズより、新規に開発するほうが作りやすいと考える人が、いまだに少なくない。私にもその経験はある。

 既存システムを活用するために修正しようとすると、プログラムを読み込むのがひと苦労だ。一般的に言って、いくらプログラミングスキルや手法の標準化が進もうと、最初から最後まで全てを規定することはできない。従って、プログラムには開発者の個性が出る。

 非常にコンパクトにプログラムをまとめる人もいれば、長々と、かつたびたびコメントや補足説明を入れながらコードを記述する人もいる。既存システムのプラグラムが何百、何千とあると、それを理解するのは、かなりの時間とエネルギーがかかるであろうことは想像に難くない。

 新機能を追加するに伴って、顧客マスターなどの中心的データベースを大幅に修正するのは、関連する全てのプログラムを変更することを意味する。そうするくらいなら、最初から新規にシステムを開発するほうが早く、コストも安くすむ、という論理になるのも理解できる。

 説得力があるようにも思えるが、本当にそういった解決策しかないのか。特に、「次世代システム」といわれる大型の開発プロジェクトでは大手企業なら、何十億円、何百億円という投資規模に達することもある。いろいろな構築方法を十分に考量した結果、最終的に新規構築という結論になったのならよいかもしれない。