このままでは日本のIT(情報技術)の未来は、かなり危うい。

 私はいたずらに危機感をあおるつもりはない。この30年余りIT部門に身を置いてきた者として肌身に感じるのは、周囲の情報化やデジタル化への期待とその高まりに対し、ITベンダーおよび企業内のIT部門は、十分に応えられるほどの改革と成長を進められていないということだ。

 ハードウエアやネットワークなどのインフラについては、技術革新が目を見張るほどで、コストパフォーマンスも高い伸びを示している。一方で、アプリケーションの開発は、依然として人間の手作業に負っている部分が大きい。

 このような状態が続く限り、(1)システムの追加・修正を行いたいのに時間とコストがかかりすぎる、(2)業務を変えたいがなかなか実現できない、(3)制度対応を始めとした法規制等にタイムリーな対応が困難、といった事態となり、ITが経営のリスクとなりかねない。

 「黒字倒産」という言葉は聞いたことがあるが、「システム倒産」という言葉は今のところあまり聞かない。ただ、ほとんどの企業が業務のIT化を行っている昨今では、情報システムが常に正常に動作していないと仕事にならない。「システム倒産など非現実的」とはいえなくなりつつある。

 24時間システムを稼動させて顧客向けサービスを提供している企業では、システムトラブルが基で、社会的に大変大きな影響を及ぼすこともある。たった数時間程度であってもだ。将来的には、システムトラブルが基で倒産に至るといった事態が起こらないとも限らない。そういったリスクを少しでも低減できるよう備えなければならない。

 このような危機的な状況に至った原因と、ユーザー企業が留意しなければならないポイントについて、いくつか指摘してみたい。

 なおこれから述べるような状況は、ほとんどのITベンダーでも起こっている。ユーザー企業は、開発を丸投げするなどの過度なITベンダーへの期待は持たない方がよい。もはや、そういう時代なのだ。