今回は、人工知能の話題でよくある問いと回答(FAQ)を通じて、本連載「人工知能のつくりかた」を振り返ってみます。総集編の今回だけを読んでも人工知能のエッセンスが分かりますが、詳細は各回の記事を参照してください。

Q1.人工知能ってなに?(第1回

 まずは「人工知能ってなに?」からの問答になります。人工知能という言葉を聞いて、どんなことをイメージするでしょうか。この答えは単純ではありません。例えば、「人工知能とは学習だ!」という答えはすっきりして心地良いものですが、多くの人の同意を得るのは難しいでしょう。

 この連載では、「人工知能は、表面的には一見何をしているか分からない」という必要条件を紹介しました。これは必要条件ですので、「一見して何をしているか分からない」だけではもちろん、人工知能とは言えません。そこで、これさえしていれば人工知能だ、という十分条件として「専門家の真似をする」という定義を紹介しました。この定義は弱い人工知能の立場に立つもので、本当は様々な制約を付けるところを、簡単かつ大胆な定義にしています。

図1●人工知能ってなに?
図1●人工知能ってなに?
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 これに対して「機械学習(あるいは深層学習)こそが人工知能であり、それ以前のものは人工知能ではないのでは」と問われることもよくあります。これに対する回答は「あなたがそう思うなら、それが人工知能です。ただし、他人の同意を得られるとは限りません」になります。

Q2.人工知能にはどんなものがあるの?(第2回第3回

 人工知能って一言で大くくりにしていますが、人工知能の中身は種々雑多です。人工知能の分類方法は様々なものがありますが、この連載の最初で紹介したのは「記号処理的人工知能」とそれ以外の「非記号処理的人工知能」です。記号処理には、機械翻訳や数式処理、エキスパートシステムなどがあり、非記号処理ではパターン認識や機械学習による人工知能があります。

 知能とは何かを真面目に考え、それをベースにする「強い人工知能」と、そうでない実質的な人工知能を目指す「弱い人工知能」に分類できます。

 人工知能を仕事で分類すると、「認識」「探索」「推論」があります。単独の場合もありますが、複数の仕事をする人工知能もあります。

図2●人工知能にはどんなものがある?
図2●人工知能にはどんなものがある?
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 「人工知能に医者の仕事をさせても、やぶ医者並みの仕事しかできないのではないか」とよく問われますが、これに対する回答は以下のようになります。「将来、人工知能が名医にはなれるかどうかは分かりません。ただ、やぶ医者にもなれない人間を医者に見せかけることなら、今でもできます」。