人工知能プログラムの研修では、全員でプログラムをつくることが大事です。一人のハッカーに頼ってはいけません(図1)。

図1●全員でつくる人工知能
図1●全員でつくる人工知能
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 どうしてこんな当たり前のことを言うのかというと、人工知能の研修では、そして実際の人工知能の実装でも、少数のハッカーがぱっとつくってしまいがちだからです。これでは研修としては意味がありません。全員でワイワイガヤガヤしながら、つくっていくことこそが研修です。

 前回は、将棋プログラムをつくる人工知能研修の企画や準備を見てきました。今回は、実際の人工知能のプログラミング研修の中身を見ていくことにします。人工知能研修でのプログラミングは、企画や戦略立案が終了し、企画部門への要求をヒアリングをして、受講者がどんな人工知能プログラムをつくるのかを決めてからスタートします。

 上でも触れたように、研修ではチーム一丸となり、全員でプログラムをつくるように誘導します。それでこそ研修も盛り上がります。喜ぶときも悲しむときも怒るときも苦しいときも楽しいときも、チーム一体で感じるようにします。

 人工知能のプログラムは、最初のとっかかりが難しく、それを理解するまでに多くの時間が必要となります。このため、誘導なしに放っておくと、人工知能を知っている受講者だけでつくってしまいがちになります。

 加えて、今回の研修のテーマであるミニ将棋のプログラムは、実際のところ一人でもつくれます。ミニ将棋にもよりますが1000行から3000行もあればつくれてしまいます。これは優秀な受講者が一人でつくった方が効率良くつくれる規模です。これでは他の人の研修になりませんので、そうならないように注意して研修を進める必要があります。

 優秀な受講者が教師役になること自体はいいことです。受講者同士で教え合うことも、研修の重要な一面です。ただ、これも度が過ぎると逆効果になります。人工知能の知識の有無で受講者は教師役と生徒役に二分される傾向があり、その役割が固定しがちです。これも研修で注意しなければならないことです。

 全員が人工知能プログラムをつくるように仕向けるのは難しいものです。その方法に王道はありません。しかしそれでも計画時に役割分担を平等にさせて、それをベースに研修を進めるようにします。もっと端的に言ってしまえば、強制的に、また機械的に、役割を等分に分担させるようにします。役割分担の決め方は、じゃんけんでもあみだくじでも構いません。役割分担を等分するところから、人工知能のプログラミング研修を始めます。