人工知能は、今第3次ブームを迎えているといわれています。つまりこれまでに、2度のブームと、2度の“冬の時代”を経ているわけです。
一体、人工知能に何があったのでしょうか。
冬の時代から第2次人工知能ブームへ
人工知能は、1960年代から70年代にかけて、第1次ブームを迎えました。このときに作られたエキスパートシステムなどの人工知能システムは、特定分野の特殊な状況下でのみ使える小さなシステムで、いわばおもちゃのようなものでした(関連記事:その昔、人工知能は「人工無能」だった)。
人工知能に対する期待が大きかった分、このおもちゃのようなシステムに対する失望も大きく、国や企業の予算もつかなくなりました。この1970年代後半を中心とする時代を、人工知能の「第1期冬の時代」と呼びます(図1)。
冬の時代を迎えた原因の一つに、コンピュータの性能問題がありました。現在と比較して、1970年代のコンピュータの性能は格段に低く、実用的な人工知能システムは開発できなかったのです。
また、人工知能が扱う問題は指数関数的に組み合わせが増大し、おもちゃのときは動作していたプログラムも実用的なサイズにした途端に処理が遅くなり、使い物になりませんでした。さらに、フレーム問題や、単純なニューラルネットワークの限界が知られ、その解決が必要になりました(関連記事:人工知能プログラムと普通のプログラムは何が違う?)。
ところが、この冬の時代は突然終わりました。1980年代からは、「第2次人工知能ブーム」が始まります。
その大きな要因となったのは、コンピュータの性能向上です。1980年代になると、実用的な量のルールがあるエキスパートシステムでも、動作するようになりました。これにより、エキスパートシステムが実際の業務で使われていくことになります。さらに、エキスパートシステムを動作させるための人工知能専用マシンもブームになります。
この時代のエキスパートシステムはLISPで記述されていました。このエキスパートシステムの興隆が、第2次人工知能ブームの牽引役となりました。その一方で日本では、「第5世代コンピュータ」という黒歴史が登場することになります。