情報共有サービス「Qiita」を運営するIncrements代表取締役の海野弘成氏
情報共有サービス「Qiita」を運営するIncrements代表取締役の海野弘成氏
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 「フェース・トゥー・フェースのようなコミュニケーションをテキストでするために、絵文字を積極的に使うことを推奨している」。2016年8月25日に開催されたEnterprise Development Conference 2016(日経BP社主催)で、Increments代表取締役の海野弘成氏はこう話した。同社はエンジニア向けの情報共有サービス「Qiita」を運営するスタートアップ企業だ。少人数のエンジニアで効率よくシステムを開発作業を進めるのに、円滑な情報共有のための取り組みをしているという。顔文字の推奨もその一つだ。

 海野氏は「国内最大級の情報共有サイト『Qiita』が明かす、情報共有による開発高速化」というタイトルで登壇。同社プロダクトマネージャーの及川卓也氏がモデレーターを勤め、対談形式で社内の取り組みを話した。

テキストの情報共有には「絵文字」

 Incrementsは顔文字を使うことで、テキストベースの情報共有を円滑化している。「声のトーンや表情で伝わる情報が、テキストでは伝わらない。活発な情報共有を維持するために絵文字は大事だ」(海野氏)。及川氏は、同社で主に使っているチャット「Slack」や日報に「絵文字が並んでいて、初めて見た時は驚いた」という。

 「これはデプロイしているところですね」(海野氏)。そういって紹介したスクリーンショットには、同社エンジニアが書き込んだチャットと、チャットボットの自動応答が並ぶ。「エンジニアがデプロイを命令すると、ボットがプログラムをデプロイする。チャットボットを使うことで誰でも簡単にデプロイ出来き、誰が何をしたかを共有しやすい」(海野氏)。Incrementsは情報共有にチャットソフトを多用している。チャットボットで務のログを残すのに加え、簡単な打ち合わせにも使っている

 同社は「リモートワークを実施していることもあって、テキストを使ったコミュニケーションが多い」(海野氏)。リモートワークを実施するのは「それぞれが最もパフォーマンスを発揮できる場所で仕事をしてもらうため」(同)だ。後から確認できる利点もあり、対面で話した会議の内容もチャットや運営する企業向け情報共有サービス「Qiita:Team」に残しているという。

当番制サポートで属人化を回避

 同社は「技術の属人化を避けるため、サービス利用者のサポート業務を当番制にした」(海野氏)という。サポート業務の当番時は開発業務をしない。技術に詳しい人間に質問できない日をつくることで、社員同士の技術共有を促している。

 技術の属人性を排除するのは「エンジニアが休みの時にトラブルが起きても対応できる体制が必要だ」(海野氏)からだ。エンジニアが少ない同社は、一人のエンジニアが特定の開発を全て担当することが少なくないという。

 同社はサービス開発に先端技術を使っていて、全員が同じ技術を習得するのは難しい。社内で話し合った結果、どの技術も70%は全エンジニアが実践できるようにしようと決まった。及川氏は「こうした話し合いができるのは、チャットの多用や顔文字の推奨といった工夫で意見を出しやすい雰囲気を作っているからだ」と話した。