新規人材の発掘、採用、活用──。この成否は、企業の競争力を大きく左右する。主に人事部門が担ってきた重要業務に、ITが進出し始めている。AI(人工知能)などを活用し、自社で活躍するのはどんな人材か、どの社員をどの部署に配置すれば力を発揮できるかを導き出す。

 ITを駆使して人材活用や管理の業務改善を目指す動きは「HR(Human Resource)テック」と呼ばれ、国内外でサービス開発が熱を帯びている。HRテックの登場は、企業の人事の在り方を大きく変える可能性がある。

 HRテックが期待を集める分野の一つが、人材採用だ。自社の人材募集に対して集まったエントリーシート(応募書類)を機械学習などを利用して解析し、その人が自社で活躍しそうかどうかを判定するシステムの開発が進んでいる()。

図●セカンドサイトが開発を進める、エントリーシート解析システム
図●セカンドサイトが開発を進める、エントリーシート解析システム
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 取り組むのは、企業向けデータ分析サービスを手掛けるセカンドサイト。新生銀行傘下の新生フィナンシャルと、経営コンサルティングなどの事業を手掛けるグリフィン・ストラテジック・パートナーズが2016年6月に設立したベンチャー企業だ。現在、顧客の大手金融機関と共同で研究開発を進めている。ほぼ実用化の目途が立っており、2016年内にもデモ用のシステムを用意する予定だ。

顔写真や筆跡から“活躍度”を推定

 顧客企業は、有能な営業担当者の獲得に課題を抱えていた。多くの人材を集めたいが、必要人員の確保は容易ではない。苦労して採用した人材が入社後に期待通りの成果を上げられなかったり、すぐ退職してしまったりといったケースもあった。面接など従来の選考方法以外に、その人の適性や自社での“活躍度”を見極める方法はないか。そこで着目したのが、エントリーシートだった。

 「エントリーシートは、企業にデータとして蓄積されている。だが、これまでほとんど活用されてこなかった」。セカンドサイトの加藤良太郎代表取締役CEO(最高経営責任者)&CSO(最高戦略責任者)はこう話す。エントリーシートには、応募者に関する情報が凝縮されている。経歴や志望動機をはじめ、筆跡や貼付された顔写真も、その人を把握するための重要な材料だ。これを活用しない手はないと考えた。