IoT(Internet of Things)では、車、機械、ロボット、メーター、センサー、ウエアラブルなどのデバイスが通信機能を持ち、各デバイスで得られる様々なデータをデジタル化してクラウドやサーバーあるいは人間に送ったり、逆にデバイス側で必要なデータやデバイスを動作させるための制御信号を受け取る。

 IoTで使われる通信接続技術としては、イーサネットや電力線通信のような有線系と、無線通信による無線系の2つに大別できる。現状のデバイス接続においては無線系が大多数であり、今後さらに大きな勢いで増加すると見込まれている。さらに無線系には、3GやLTEに代表されるセルラー系と、Bluetooth、無線LAN(Wi-Fi)などの非セルラー系がある。

 非セルラー系のIoT向け無線技術には、Bluetooth、Wi-Fi以外にZigBee、Z-Waveなどの数メートルから数百メートルのカバー範囲を有する短距離無線があり、無線接続全体の中で大きな割合を占めている。日本では、Wi-SUNも短距離無線として広く利用されつつある。

 一方で、一般にLPWA(Low Power Wide Area)と呼ばれる無線技術が注目を集めている。低コスト、低消費電力のデバイスを利用して、数キロメートル以上のカバー範囲を持つのが特徴だ。

 LPWAには、最近世界的に導入が広がっているLoRaやSIGFOXなどの非セルラー系と、LTEをベースに標準化されたNB-IoT(Narrow Band IoT)やLTE-Mなどのセルラー系がある。デバイスとの接続には短距離無線や非セルラー系LPWAを用い、セルラー系の無線機能を持つゲートウエイを介して移動通信ネットワークに接続される形態(キャピラリーネットワークとも呼ばれる)もある。

 本特集では8回に渡り、NB-IoTおよびLTE-Mと呼ばれているLTEベースのIoT向け無線技術に中心に、IoT向け無線技術を解説していく。

第1回 IoT向け無線技術
第2回 LPWA
第3回 LTEベースのLPWA
第4回 IoT向けLTE技術の標準化
第5回 セルラーLPWAの要素技術
第6回 LTE-Mの仕様
第7回 NB-IoTの仕様
第8回 5Gに向けた将来展望

▼セルラー:一般に1つの基地局の地表面のカバー範囲は六角形に近い形をしており、細胞の形に似ているのでセル(cell)と呼ばれる。移動通信ネットワークは、複数のセルでエリアを面的にカバーするように配備されていることからセルラーネットワークと呼ばれる。転じて、セルラーは「移動通信」という意味で使われている。