「あの子たちって、そもそも戦士なのかな?僧侶なのかな?それとも…」
深夜、ドラクエIIIをプレイしながらつぶやく舞子。そういえば、舞子はアーサーとすけさんの得意分野はおろか、経歴すらよく知らない。これでは、適切な職務分担もできないし、業務効率アップも狙えない。チーム発足から今日まで、とにかく目先のトラブル対応やクレーム対応、それらの報告などで、あたふたとしていた。まともにメンバーと会話する余裕なんてなかったのだ(お説教は何度もしたけれど…)。
「メンバーのこと、もっと知らなくちゃ」
缶の底にわずかに残ったビールを飲み干し、舞子はその日の冒険を終えた。
次の日の昼休み、舞子は二人を誘ってオフィスを出た。
「いつも社食ばかりじゃ飽きるしね。たまには外に行こう」
真夏の突き刺すような強い日差しが、3人を照らす。オフィスの冷房で冷え切った体には、むしろ心地いい。が、そう感じたのも束の間。額からにじみ出た汗が、舞子の額を伝う。
路地裏の小さな定食屋。壁の煤けとひび割れが目立つ、昭和の雰囲気そのままの店だが、隠れた人気店のようで、いつも近隣のサラリーマンでにぎわっている。今日は幸い、先客の姿はない。フライングして職場を出て正解だった。3人は奥の座敷にあがり、そろって空揚げ定食を注文した。
古びた木の座卓を挟んで奥に舞子が、手前にアーサーとすけさんが並ぶ。思えば、こんな風にのんびりと3人が顔を合わせたことって、今まであっただろうか?
「そういえばさ、2人はここに来るまで、どんなことをやってきたの?」
ちょうどお冷が運ばれてきたタイミングで、舞子は2人を見つめる。
「そうっすね。僕は最初の配属は“LINDA”(人事システム)の開発チームで…」
最初にアーサーが口を開いた。そして、少し照れくさそうに自分の過去を語り始めた。