舞子のチームに配属になった新入社員の日野秋菜(アキナ)。初日はいきなりクレーマーの電話対応でめげそうになったものの、舞子の取り計らいでなんとか事なきを得た。電話対応は少々厳しそうだったので、アキナにはしばらくメールでのユーザー対応(問い合わせ、申請、クレーム対応など)をやってもらうことにした。今日は朝からニコニコとメールを打っている。
「アキナには優しいんすね、舞子さん。俺にももっとソフトに接して欲しいなぁ…」
今朝も遅刻したアーサーが、減らず口をたたく。
「あんたね。そういうことは、ちゃんと朝出社してから言いなさい!」
「やべ。ヤブヘビだった」と言いたげな表情で、アーサーは舞子から目をそらした。
アキナの仕事のやり方を見ていて1つ気になることがあった。やり取りが多すぎるのだ。
パスワード忘れ、ユーザーの属性情報の変更など、簡易な問い合わせに対して何度もメールをやり取りしている。これでは相手(ユーザー)ももどかしい。
もちろん、一発で決められることもあるようなのだが、どうもムラがある。
――これでは非効率だし、なかなか成長しないな…。
舞子はアキナの後ろに立って腕組みする。これから舞子のチームは、購買システムのグループ会社展開など大きなイベントも控えている。アキナにも早く成長して戦力になってほしい。
――ううむ。どう指導したものか…。
帰り道。舞子は月明かりを背に受けながら、考えあぐねた。
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答えが出ぬまま、自宅にたどり着く。今日のお仕事終了!シャワーを浴び、身も心も普段着に着替える。
さて、ドラクエIIIの続きをやろう。
パーティー4人のレベルもだいぶ上がり、格段に強くなってきた。敵と出会う。大きなこん棒を持った巨大モンスターが2匹、画面いっぱいに現われた。
つい2、3日前までは、このモンスターを倒すのに6ターンくらいかかったが、いつの間にやら3ターンで倒せるようになっていた。あっさり戦闘終了。パーティーの成長を実感する。
「ん、そういえば…!?」
ふとつぶやく舞子。
「アキナはユーザー対応…何ターンで終えられているのかしら?」
舞子は飲みかけの梅酒ソーダを片手に、天井を仰いだ。