強い企業とは、継続的にビジネスモデル変革や業務プロセス変革を実現できる企業のことだ。しかし、個別最適化された情報システムが、これを妨げることが珍しくない。

 柔軟なシステムアーキテクチャーを実現するための基本的な考え方を、なじみ深い都市の構造に見立てて学んでいこう。今回は、データ統合のポイントを、東京の都市構造から考える。

写真●東京の街並み
写真●東京の街並み
(出所:123RF)
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 営業支援、コンタクトセンター、マーケティングオートメーションといったフロント系システムを導入しているが、顧客情報が分散している――。企業システムにおいて、こうした状況が散見される。特にSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)が普及して事業部門が独自にシステム導入しやすくなったこともあり、サイロ状態に陥ったシステム群が増えているように感じる。

 システムがサイロ化すると、顧客情報を扱うシステム群が期待するような機能を発揮できなくなるという問題を引き起こす。架空の例として、ある家電製品Xを販売する企業を想定しよう。

 製品Xには、まれに電源が入らなくなる潜在的な不具合があった。販売開始直後から電源が入らないという苦情が各営業所に寄せられていたが、個別対応で片付けてしまっていた。各営業所単位でみると、1年に1件あるかないかといった頻度だったためだ。本社の経営層は、製品Xの不具合が明るみに出た際に改めて調査して初めて、全国で数十件の苦情が寄せられていたことを知ることになる。経営責任を問われても、仕方のない状況だ。

 なぜ全社対応に至らなかったかというと、各営業所はそれぞれが独自のCRM(顧客関係管理)システムやエクセルで顧客を管理しており、データ連携ができていなかったからだ(図1)。

図1●営業所間での情報連携の状況
図1●営業所間での情報連携の状況
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 システム間で、顧客データや対応データを統合できれば、こうした課題は防ぐことが可能だ。ただし難しいのは、分散するデータをどこで統合するか、である。生命保険会社であるC社が運用する情報システムのアーキテクチャーを例に、ポイントを考えてみよう。