強い企業とは、継続的にビジネスモデル変革や業務プロセス変革を実現できる企業のことだ。しかし、情報システムがこれを妨げることが珍しくない。情報システムが縦割りで、アーキテクチャーが個別最適になっている例が多いからだ。

 かといって、かつてブームとなった「エンタープライズアーキテクチャー(EA)」が定着しなかったことからも、全体最適された情報システムを構築するのは容易ではない。柔軟なシステムアーキテクチャーを実現するための基本的な考え方を、なじみ深い都市の構造に見立てて学んでいこう。

写真●京都の街並み
写真●京都の街並み
(出所:123RF)
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 「碁盤の目」で知られる京都の街並みは、南北と東西に直交する街路が特徴だ(写真)。唐の長安をモデルにしたという平安京の成立から1200年以上を経た今もなお、きっちりと区画整理された当時の面影をとどめている。

 企業システムにおけるアーキテクチャーを考えるうえで、京都の碁盤の目のような区画整理を心がけることは、重要なポイントだ。ビジネスモデル変革などの外的要因に対して、柔軟に対応できるからである。企業事例を基に、要点をみていこう。

ビジネスモデル転換でシステムをどう変えるか

 大型機器の製造・販売を手掛けるA社で、新しいビジネスモデルに挑戦しようとの号令が掛かった。まず顧客企業に大型機器を設置し、利用回数に応じて課金する。いわゆるサービス型のビジネスモデルの導入だ(図1)。

図1●A社のビジネスモデル変革
図1●A社のビジネスモデル変革
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 A社は従来、大型機器の販売に徹していたが、コモディティ化によって製品価格が下落傾向にあった。単なる機器売りの販売型ビジネスではなく、サービスを提供することで価格の下落を食い止めようというわけだ。IoT(インターネット・オブ・シングス)の普及で、こうしたビジネスが可能になってきたという背景もある。A社に限らず、サービス型ビジネスモデルへの転換を目指す企業は少なくない。

 ただし、情報システムの観点でみると簡単なことではない。売り上げや債権の計上方法が異なるため、既存の基幹系システムをそのまま使っていては対応できないからだ。A社の場合、売上計上のタイミングは機器納品時の1回だけだったのが、機器利用の度に計上できるようにしなければならない。