「FinTechは不可逆的な進化である。後戻りはできない」──。みずほフィナンシャルグループ 執行役常務グローバルプロダクツユニット長 兼 インキュベーションPT担当役員の山田大介氏は、2016年8月3日開催の「FinTech Impact Tokyo 2016」(日経FinTech、CIO(IDG Group)主催)の基調講演で、「スタートアップとの協業で加速する、みずほの次世代金融サービス戦略」と題して、同行のFinTechへの対応状況と今後の戦略について語った。

みずほフィナンシャルグループ 執行役常務グローバルプロダクツユニット長 兼 インキュベーションPT担当役員の山田大介氏
みずほフィナンシャルグループ 執行役常務グローバルプロダクツユニット長 兼 インキュベーションPT担当役員の山田大介氏
(撮影:大類 賢一)
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新技術を生かすビジネスモデルを作らないと生き残れない

 山田氏は、FinTechについて「IoT(インターネット・オブ・シングズ)におけるカテゴリーの一つ」と定義する。FinTechを支える要素技術は、IoTと同様に、デバイス、AI(人工知能)、ビッグデータ、ネットワークである。コンセプトもIoTをベースとする他のビジネスモデルと共通とする。

FinTechはIoTのカテゴリーの一つ
FinTechはIoTのカテゴリーの一つ
(撮影:大類 賢一)
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 分かりやすい例えとして、料理を挙げた。牛肉と玉ねぎという食材は、調理や味付けによって牛丼にもなれば、ハヤシライスにもなる。同様に、クラウド、ビッグデータ、インターネットという要素技術は、金融のビジネスモデルで用いればFinTechになり、シェアリングエコノミーで用いればUberになる。

 技術の進歩を振り返れば、IoTとFinTechは同じようなステップを経て、同じように進化を遂げてきた。デバイスの進化、インターネットの拡大、スマートフォンの爆発的普及、クラウド・ストレージ技術革新、アルゴリズムの変化、AIの非連続的な発達。それらの複合的な要素が絡み合い、技術革新をもたらしている。

 「今までのようにビジネスモデルに合わせてテクノロジーを使うようでは、時代についていけない。むしろテクノロジーにキャッチアップするようなビジネスモデルを作らないと、生き残れないのではないか」という。それを同氏は非可逆的な進化と説明する。

IoTの進化の流れ。これはFinTechも同じ
IoTの進化の流れ。これはFinTechも同じ
(撮影:大類 賢一)
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 数多くの有識者がFinTechによって金融が大きく変わると指摘している。実際、銀行の金融サービスと重なる仮想通貨やクラウドファンディングも大きな成長を見せている。

 「FinTechは我々のビジネスを奪いつつある。今、知られていないライバルが突然目の前に現れて、市場を席巻することもあり得る」と、同氏は既存の金融業界が抱えている危機感を言葉にする。