「日本の事業は世界最速で成長中。観光産業にも貢献できている」。自宅などをネット経由で貸し出す民泊仲介の世界最大手、米Airbnb共同創設者の一人でCTO(最高技術責任者)のネイサン・ブレチャージク氏は自信を見せる。政府による民泊解禁論議や拡大するインバウンド(訪日外国人)需要を追い風に、事業拡大を図る考えだ。


高校時代に事業を興すなど起業家歴の長いブレチャージク氏
高校時代に事業を興すなど起業家歴の長いブレチャージク氏
(写真:陶山 勉)
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 「Airbnb」は単なる宿泊ではなく、「暮らすように旅をする」をコンセプトとして掲げています。全く新しい旅行の方法を提案したいという思いからです。

 見知らぬ土地へ旅行して、その地域の文化や環境に触れたり、地元の人々と交流したりする。ありきたりな観光ではなく、あたかもその土地に住んでいるかのような体験を提供したいのです。

 この夏、「行くのではなく、暮らすのです(Don’t Go There, Live There)」というコピーの広告キャンペーンを展開しています。これも単なる旅行ではなく、訪問先の地元を本当の意味で体験してもらいたいとの考えからです。

 Airbnbのサービスには世界191カ国に200万件の物件が登録されています。みなさんが思い付くたいていの都市や街角には、Airbnbの物件があるでしょう。

「アパートの一室で始めた事業は、今やグローバルになった」と語るゲビア氏
「アパートの一室で始めた事業は、今やグローバルになった」と語るゲビア氏
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Airbnbの最初のゲスト3人
Airbnbの最初のゲスト3人
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「現代のツーリズムは壊れている」。三人の共同創設者の一人、ジョー・ゲビア氏は、こう言ってはばからない。旅行会社の宣伝とインターネット上にあふれる観光地の情報。旅は商業化・画一化され、「誰もが同じ観光地を訪れて、同じ写真を撮っている。表面だけを見て、文化の豊かさを体験できていない」。

 米サンフランシスコで、ゲビア氏らがアパートの一室に宿泊者を迎えたことをきっかけに始めたAirbnb。事業の背景には、こんな問題意識があるという。この5月には、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)との提携を発表した(「日本流のホームシェアを」、CCCとAirbnbが提携)。狙いは共同のマーケティング活動に加えて、日本での民泊の普及と同社サービスへの理解を促すことだ。

 「Airbnbのサービスの本質が、日本では十分に理解されていない」。CCCの増田宗昭社長兼CEO(最高経営責任者)は、提携の背景をこう説明する。