訪日外国人旅行客に対するマーケティング・リサーチ手法の一つとして、街頭調査がある。施設や街頭において、直接彼らに声をかけて調査への協力を依頼し、許諾を得られた旅行客から情報を引き出す手法である。

 旅行客にその場で直接接触するため、リアルタイムに旅行客の生の声に触れられることが最大の利点であり、個々の旅行客の詳細な情報を収集することもできる。

 一方で旅行客の視点で見ると、異国の地で見知らぬ人間から突然声をかけられるわけであるから、警戒するのが自然であり、許諾を得るためのハードルが高いといえる。スムーズな実査のためには、実際に声をかけるインタビュアーが調査対象国の言語に堪能であることはもちろん、旅行客から信頼を得るためのさまざまな細かい工夫が必要となる。

 アジア13カ国、2000万人超にインターネットリサーチが可能な消費者パネル「ASIA Cloud Panel(アジアクラウドパネル)」を提供しているGMOリサーチでは、外国人調査に強みを持つパートナーと連携して、訪日外国人旅行客に対する街頭調査サービスの提供を開始した。比較的滞在中の時間的余裕がある個人旅行客を中心に、定量アンケート調査だけでなく、定性インタビュー調査も可能であり、英語圏、中華圏をはじめとして、アジア圏のほとんどの言語をカバーしている。

 訪日外国人の急増が報じられる中、数年前から「爆買い」という言葉が頻繁にメディアを賑わすようになった。訪日客の爆発的な買い物を表すこの言葉は、特に訪日中国人客においてより顕著であり、一人当たりの平均買い物額約16.2万円は全訪日旅行客平均の約7.4万円と比較して2倍を上回り、まさに爆買いという言葉がふさわしい(観光庁「訪日外国人消費動向調査」2015年年間値)。円高や中国経済の減速などで一部に陰りがみられるものの、依然として訪日中国人客の旺盛な消費意欲は健在である。

 GMOリサーチでは、この爆買い行動について、同じ中国人でも団体ツアー客と個人客に違いがあるのではないかという仮説のもとに、東京・秋葉原で街頭調査を実施した。背景には、これまで団体ツアー中心だった観光目的の中国人訪日旅行客が、急速に個人旅行へとシフトしており、年内には個人客が多数派となる状況がある。今後、個人客への対応が求められていく中、これまで多数派だった団体ツアー客との違いはどこにあるのかを見定める必要があると考えられる。

 1回目の調査として、2016年4月4日および6日に中華圏(中国・台湾・香港)から秋葉原を訪れた外国人78人に対して、定量アンケート方式で街頭調査を実施した。

 当該時期は桜のシーズンであり、都内の著名な桜の名所である上野公園や新宿御苑は、清明節を利用して来日する中華圏訪日客でいっぱいだった。近隣の秋葉原も、家電やサブカルチャー関連の買い物目的で大挙して訪れる訪日客を数多く見かけた。そのため、必要なサンプル数を2日間で回収することができた。