パワフルなCPUとGPUに潤沢なメモリーを搭載した専用端末を使う――。そうした“常識”がある3D CAD端末にも、VDI(仮想デスクトップ)化の流れが進んでいる。日立建機は2014年から、3D CAD専用端末のVDI化を進めている。

 きっかけとなったのは、2014年4月のWindows XPのサポート切れだ。導入時期が古い一部の端末はXPを利用していたため、サポート切れまでに更新しないとならなかった。しかし、単純に新しいマシンに切り替えれば済むというわけでもなかった。既存の3D CAD端末を取り巻く環境は様々な課題を抱えていたからだ。

 特に大きいのは、「3D CAD専用端末」というものが時代に合わなくなっていたことだ。まず、業務拡大とともに設計スペースが手狭になり、3D CAD端末が場所を占有することが問題化していた。3D CADの画面キャプチャーを使った資料作成も大変だった。また、設計スペース以外や遠隔拠点からCADのデータを見たいというニーズもあった。

写真●日立建機の田端 聡氏(開発支援センタ BOM・CAD推進部 技師)
写真●日立建機の田端 聡氏(開発支援センタ BOM・CAD推進部 技師)
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 こうした背景があり、日立建機の田端 聡氏(開発支援センタ BOM・CAD推進部 技師)は3D CAD端末のVDI化に取り組んでいった(写真)。いくつかの方式を比較検討した結果、米Citrixのデスクトップ仮想化ソフト「Citrix XenDesktop」が搭載する「vGPU(GPU仮想化)」を使えば、3D CADが求めるパワフルな環境をVDIで実現できると手応えを得た。

 vGPUは仮想化対応GPUを搭載したサーバーを使って、GPUの演算能力をハードウエアによる支援で仮想化する仕組みだ。VDIで一つの物理CPUを共有するように、物理GPUを複数の仮想マシンで共有する。日立建機は米NVIDIAの仮想化対応GPU「NVIDIA GRID」が搭載されたサーバーを選択した。「仮想マシン4台で共有した場合のパフォーマンスが、社内標準だったGPU『NVIDIA Quadro 2000』に相当する」(田端氏)。