目的地までの移動時間をもっと快適に―。長年の課題に活路を開くため、交通会社がITを活用する動きが広がっている。多言語翻訳やきめ細かい情報発信で旅の合間のストレスを減らし、満足度を高める作戦だ。

 「鳥取砂丘に行って下さい」「10分後に着きます」「美味しいご飯が食べたいです」「今の時期はカニがおすすめですよ」。

 外国人なら1人1000円で3時間乗り放題になる、鳥取市で人気の観光タクシーサービス「1000円タクシー」。車内では、外国語が不得手なドライバーが言葉の壁を超えて乗客と会話を弾ませる。間を取り持つのは、KDDIが2015年11月から1000円タクシーに搭載した独自の多言語音声翻訳システムだ(図4)。

図4 多言語音声翻訳システムを搭載した鳥取市内の観光タクシー
車内の会話が弾み、観光案内もスムーズに
図4 多言語音声翻訳システムを搭載した鳥取市内の観光タクシー
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 鳥取県は砂丘や旧城下町など名所が点在するため移動距離が比較的長い。その時間を少しでも訪日外国人に楽しんでもらおうと、地元のタクシー会社でつくる鳥取ハイヤー共同組合がKDDIと協力してシステム導入を実現させた。対象のタクシーは当初の9台から現在は18台に倍増、2016年3月末までの約4カ月で400組、1200人の観光客が利用した。

 現在は英語、中国語、韓国語の3カ国語の翻訳が可能。タクシーの運転席と後部座席に1台ずつ設置したスマホを介して、外国語と日本語、双方の会話内容を数秒で訳す。一方のスマホに吹き込んだ音声をクラウド上のサーバーで変換した後、もう一方のスマホに配信して発音する仕組みだ。