国内では知らない人がいない有名店や名旅館も、海外では事情が違う。「ここに来ればこんなワクワクが味わえる」をいかに伝えるか。主戦場はネットだ。大手企業は情報発信に本腰、クチコミ支援サービスも活況を呈する。

 「これこれ!ネットに出てた」――。

 若者を中心に、来店客で賑わう雑貨販売大手ロフト(東京・千代田)の渋谷店では、訪日観光客が急増している。ロフトが全国に展開する約100店舗のうち、渋谷店を含む20店舗が免税カウンターを設置。それらの店舗では訪日観光客からの売り上げが、全体の2割に上る。

 以前から中国の旅行会社向け雑誌に広告を掲載して知名度向上に努めていた同社は、半年前からインバウンド対応に本腰を入れている。2015年秋、2億3600万人の月間アクティブユーザーを擁する中国最大級のSNS「微博(ウェイボ)」に公式ページを立ち上げた。雑貨を中心に、ロフト店舗で扱う商品を解説したネットのコンテンツ「コトキジ」を中国語に翻訳し、掲載している(図2)。

図2 “旅マエインバウンド対応”を進める企業の例
来訪前の準備をスムーズにするITを着々と整備
図2 “旅マエインバウンド対応”を進める企業の例
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日本の人気商品、SNSで情報発信

 これまで取り上げてきたのは、カロリーを管理できる弁当箱「カロリーBENTO」や、無添加ボディソープ「LORE」など、国内での人気商品ばかりだ。ロフトは自社店舗での免税売り上げの状況を分析。日本人の顧客と同様、新商品に敏感に反応すると気付いた。営業企画部販売計画の池田淳平氏は「水筒や電動歯ブラシなど『インバウンドの定番』とされてきた商品ではなく、ロフトとしてお勧めしたいものを前面に押し出している」と話す。

 2016年2月には、スマートフォン決済サービス「WeChat Payment」も導入。ロフトの店舗で使えるとウェイボで発信し、「面白い商品が満載で、かつ買い物しやすい」というイメージ作りに余念がない。