ビットコインやその他ブロックチェーンの特徴の一つとして、仮想通貨や暗号通貨と呼ばれる価値の交換が挙げられる。

 「暗号通貨」という言葉が示す通り、ブロックチェーンの仕組みはデジタル署名やハッシュ関数など、暗号に関連した技術をベースに構築されている。主なブロックチェーンでは、例えば以下のような箇所で暗号やハッシュ関数が使われている。

・トランザクション(取引記録)へのデジタル署名【公開鍵暗号技術】
・利用者(の公開鍵)やトランザクションを識別するためのID生成【ハッシュ関数】
・トランザクションのハッシュツリー生成【ハッシュ関数】
・ブロックのハッシュチェーン生成【ハッシュ関数】

 このように、暗号技術はブロックチェーンに欠かせないものである。特に、印鑑の代わりに電子的な署名を書類データに付与する「電子署名(Electronic Signature)」は、ブロックチェーンと技術的な共通点が多い。電子署名を実現する技術としてはPKI(public key infrastructure︓公開鍵暗号基盤)に基づくデジタル署名がよく知られており、マイナンバーカードで提供される機能でもある。

 その一方で、誰でも参加できるビットコインのようなパブリックブロックチェーンには、こうした暗号技術を管理・運用する主体がいない。例えば、PKIで署名鍵・検証鍵を発行する認証局に当たるような管理主体は、ビットコインには存在しない。

 このため、暗号鍵をどのように管理するのか、脆弱性が見つかった暗号アルゴリズムの移行を誰がどうやって行うのかなど、今後大きな問題になる可能性がある。

 本記事では、PKIなど既存の暗号技術とブロックチェーンを比較しながら、ブロックチェーンが抱える問題を明らかにしたい。今回は「暗号鍵の管理」、次回は「暗号アルゴリズムの移行」について取り上げる。