この連載では、機械学習にまだなじみがない ITマネジャーやエンジニアに向けて、ビジネスへの活用を前提に、機械学習とその応用について説明している。

 ここまで機械学習の基本から実際の応用例、ビジネスに生かす際のポイントまでを解説してきた。今回は、前回(機械学習をビジネスに応用! つまずかないための三つのポイント)までの内容を踏まえて、機械学習や人工知能をビジネスに活用する際に参考にしてほしい三つの戦略を紹介する。

 本題に入る前にまず、人工知能と機械学習との関係について改めて整理しておこう。

「推論」を実行できるかがポイント

 「何をもって人工知能とみなすか」に関しては様々な意見があり、定まったものはない。一つの判断基準として、「人間のように『推論』ができるかどうか」が挙げられる。

 推論とは、ある事実を元に未知の事柄を予想し、論じることをいう。「人間のように推論する機械」が人工知能であると定義でき、機械学習は推論を機械に実行させる技術の一つであるとみなせる。

 推論と一口に言っても様々あるが、ここで注目したいのは以下の三つである(図1)。

図1●推論の形式の例
図1●推論の形式の例
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(1)演繹的推論:一般原理から個々を導き出す
(2)帰納的推論:個々の情報から一般事象を導き出す
(3)仮説形成的推論:起こった現象を最もうまく説明できる仮説を形成する