この連載では、機械学習にまだなじみがないITマネジャーやエンジニアに向けて、ビジネスへの活用を前提に、機械学習とその応用について説明している。前回(機械学習で怖い「次元の呪い」、手法の選択は適材適所で)は、機械学習を応用する際に押さえておきたい勘所を紹介した。

 今回は機械学習の具体的な応用例として「センサー行動認識」を取り上げる。筆者が手掛けたヘルスケア分野への事例を題材にして、説明したい。

センサーから得たデータを基に人間の行動を認識

 IoT(Internet of Things)は、いま最も注目を集めているIT分野の一つだ。その背景として、センサーが身近な存在になったことが挙げられる。

 例えばスマートフォンの多くは、バネの変化を測る三軸加速度センサーや、振動する物体が回転するときにかかる力(コリオリ力)を測る角速度センサー(ジャイロセンサーともいう)などを搭載している。半導体集積技術を使ってセンサーなどの機械部品を作るMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術の実用化により、スマホなどの一般的な機器でセンサーを利用できるようになったからだ。

 これらのセンサーから得たデータを利用すると、「歩いている」「自転車に乗っている」といった人間の行動を認識できる。これがセンサー行動認識である。

 センサー行動認識を実現するうえで、機械学習は大きな役割を果たす。まず、その基本的な方法を説明しよう。

センサーデータと正解行動データを学習

 ここで利用するのは、教師あり学習である。センサー行動認識では「ある一定時間ごとに測定したセンサーデータ」(問い)と「正解となる行動」(答え)の組み合わせを教師データとして使う。